「PHASE2:絶望 ト 希望 ヲ 抱カセヨ」
――翻る、色とりどりのローブ。
『!!?』
吹き飛んでいく化け物たち。
駆け付けたのは、腕に魚を獲る熊の刺繍が施された腕章を付けた――――風紀委員の面々だった。
『間に合った。ペルド』
かなめの御声を発動させたグレーローブ――ヴィエルナ・キースがそう告げる。声は拡声魔石によって全校に放送され、プレジアにいる全ての者達が浮足立ちで耳を傾ける。
ペルドの声色が少しだけ和らいだ。
『よく間に合ってくれた、風紀委員の精鋭たち! 教えてくれ、一体今何が起こっている!?』
『大変。敵の主力部隊、プレジア各所に召喚され始めたみたい』
『な――なんだと!? くっ――そこの学祭委員! 放送を映像出力に切り替えろ!』
『え、私!?』
『急ぐんだ!』
『は、はいいぃ!』
ケイミー・セイカードの声と共に、プレジア第二層中央部に魔光が照射され――――七三分けにツーブロックという髪型をした精悍な顔立ちの男、ペルド・リブスの姿が投影された。
『どうやら、強い敵の数は多くはないようだな。では今のうちに、諸君には避難してもらおう。風紀委員が誘導するから――』
声が途切れ。
同時にプレジアの学生の、子ども達の、来場客の周囲で――――先の化け物を吐き出したのと同じ大きさの魔法陣が、そこかしこに出現する。
今度こそ、群衆が沸いた。
次から次へと現れる細身の生命体。
気付けば人々は、その化け物に取り囲まれるようにして立ち尽くしていた。
ジリジリと距離を詰めてくる細き一軍。
人々を守るようにして立つ風紀委員。
『どどど、どうするんですか風紀委員さんっ!!』
『うるさいっ! くっ、こんなに数が多いとは……誰か、誰かいないのか! この状況を逆転できる、そう――――』
――――目を閉じ、拳を握り。
言葉を、ために、ためて。
普段なら絶対にしないであろう、情感たっぷりな演技ののち、その合図を言い放った。
『――――神様のような、者達がっ!』
『呼んだかしら? 私達のことをっ!!』
――雷が。
炎が、水が、風が、土が。
各層の化け物の軍団を、綿毛のように吹き飛ばす。
『っ?! な――――何者だお前達はっ!』
『私達ぃ?』
第二層に降り立った赤毛の少女が、口元にかなめの御声の魔法陣を光らせて不遜に笑う。
投影魔石が彼女をとらえ、妖しげで荘厳な装束をまとう御姿を映し出す。
「――――ぁ――――」
その姿に、どこか見覚えのある者達がいた。
一人、また一人と、人々はその少女と出会った場所を思い出す。
煌めきの世界。万雷の拍手。
その中心で、満面の笑顔で彼ら観客に一礼してみせた――――
『――――英戦の魔女!!!』
『タタリタだ!!!?』
――英戦の魔女、タタリタだった。




