「Interlude―8」
「あっやしー。それ、ホントの話なのぉ? 男と女が密室に一緒でベンキョウだけぇ??」
「脳内ピンク一色のワイセツマンと一緒にしないでよ」
「誰がワイセツマンよっ?!?」
「……はぁ、でもさ。正直、もう少しくらいこう、甘酸っぱいやりとりがさ。あればよかったのになって思うよ。そりゃ私だってさ。言わせんなよもぉー」
マリスタがエリダの言葉を受け流し、机に突っ伏す。
シータが眉根を寄せ、手で下唇に触れた。
「……じゃあ、ホントのホントに、勉強だけしてたの? マリスタは」
「そうなのよ。ホントのホントーに、ヒザ付き合わせておべんきょしてたの。……その甲斐あって、ケイ・アマセくんは見事に通訳魔法をマスターしましたとさ。翻訳魔法は修行中だけど」
「えっ、アマセ君まだ覚えきれてないの???! いがぁい……」
パフィラが目を丸くする。
「んー、なんかこう、魔力に呪文で『使う』って感覚が、イマイチよくわかんないみたいだった」
「魔力を使う感覚が分からないって……魔力の使い方なんて、生まれた頃から誰しもやってることじゃないの?」
「その感覚が分からないのが、アマセ君って転校生なのよ」
システィーナがエリダの声に答えた。
リアが首を傾げ、パフィラがそれに倣う。
「……不思議な人だね」
「フシギっていうか、へん??」
「でも、そうなるとますます分からないわよね。アマセ君……どうして義勇兵コースに所属して――――」
「おい、大変だぞっ!」
堂々巡りを始めた少女たちの会話を遮ったのは、教室に飛び込んできた男子生徒の声だった。
自然、耳をそばだてる少女たち。
「どうしたんだよ」「なんか図書室で、アマセと風紀委員の奴らが大騒ぎしてるらしいんだよ!」「アマセと風紀が?」「うわ、マジで全面対立してんだ、アマセと風紀って」「オーダーガードの件で面子潰されてるから……風紀委員の奴ら、きっとそのことでアマセとモメてるに違いないぞ」「アマセも馬鹿だよな、風紀っつったら別名貴族クラブだぞ、あんな無名で後ろ盾ない奴が勝てるわけないのに」「でも面白そうじゃない? ウケるわ」「どこだ場所!!」「図書室前! もうすごい人だかりだよ!」「ええーやめようよ、巻き込まれたくないし」「わぁ、私アマセ君がやられてたら後で慰めてあげよっかなー」「オーダーガードを倒したとかいう実力、見せてもらおうか!」
マリスタが弾けるように席を立つ。その勢いに体をビクリとさせる女生徒もいる中、彼女はまったく関知しない様子で駆けだした。




