「救いの意志」
「ワ――――何を言い出すのエリダっ」
「だってそうじゃん! 姉さんがどう思ってるかは知らないけど、今アルクスの人達がやってることは身内の利益になることばっかりだよ! ワルモノじゃなかったら何なの!?」
「……こんなところで善悪の話はしたくないけど、あんたには解ってないだけなのよエリダ。全ての人を救うなんてできないの。助ける為には、取捨選択が必要なことだってあるのよ」
「それもごまかしだからね」
「え――――え?」
「解ってないのは姉さんの方じゃない。アルクスは『救えるだけの人を救う』義勇兵団なんでしょ? でもアルクスの人達が今やってるのはそうじゃない。アルクスは今、救いたい人だけを救おうとしてる!」
「!」
「しかも、理由はリシディアでの自分たちの評価を押し上げたいから……それで国の兵士かもしれない人たちと戦ってどうするの? 王女がプレジアにいるならどうするの?」
「そ、それは」
「何をするか解りそうなもんだわ。だからアマセは……マリスタ達はアルクスに何も言えなかったんじゃないの? 信用できなかったんじゃないの!?」
〝学生風情の部屋に? まるで寝込みを襲うような早朝に来て? 大の大人が寄ってたかって暴力で? 学生風情たった一人を制圧する?…………出来の悪い冗談ですね〟
〝どう信用しろと言うのだ。――――差別と偏見と、傲慢と浅薄に満ちた温床で肥え太ったお前達何の力も無い生徒達に!!…………一体何をどう期待して信じろというんだ〟
〝でももう今は変わったんです!! いいえ、変わろうと頑張ってるッ!! 苦しみながら今までの自分と戦いながら変わろうとしてるんですッ!! それを、それを――――謝ってくださいよ今言ったことッ!!!〟
(…………全くだ。この状況でどう信用しろというんだ、アルクスを)
「アルクスのやってることは、戦争につながりかねないこと。その上プレジアの人をダメな奴らだってレッテル貼りして、完全に抑え込むために実力行使までして。信用できるはずないじゃん」
「……戦争につながるかどうかなんて解らないわ。私達の行動も、もちろんあなた達の計画もね」
「でも避けようと努力してる。マリスタ達は――あたしは、リシディアそのものも守りたいから。だから、姉さんをこのまま行かせるわけにはいかない」
「……………………。一つだけ訊かせて、エリダ。そこまで私達を信用してないのに……どうして私に作戦のことを話してくれたの?」




