「心得たあやしかた」
「妹さん、確か例のデモに参加してたよね? 何か情報が引き出せると……他に作戦の立てようもあるんじゃないかな」
「あくまで兵士長の作戦に異を唱えるんだな、ゼイン。お前は」
「非情になる前に、尽くせる手は尽くしておきたいってだけさ。牢番は代わってあげるよ」
「……手短に済ませてくる」
ゼインに託し、詰所を出る。
ペトラの妹――銀髪の彼女と違い、父方の金色の髪を受け継いだエリダ・ボルテールは、姉の姿を神妙な顔で捉えた。
長くを共にしたペトラは、すぐに彼女の様子がいつもと違うと見抜く。
「……どうした?」
「……少し付き合ってくれない? 行きたい所があるんだ」
「離れるのはダメだ。仕事中――」
「お願い!」
「――」
〝ねえさん、だめだよ!! お願い!!!〟
静かに言葉を遮ったはずのエリダに、何故かあの頃と同じ気迫を感じ。
〝尽くせる手は尽くして――〟
「……少しだけだぞ」
姉妹は、連れだって教室区画へと向かった。
◆ ◆
「……こんな所に連れてきてどういうつもりだ?」
その場所――とある教室区画の一室の入り口で、ペトラは立ち止まる。
エリダはペトラへ、教室の中央で振り向いた。
「……話せないからさ。人気のないところじゃないと」
「無駄だぞ」
「で、話ってのがさ――ってなんでよっ?! まだ何も言ってないでしょ!?」
「この場所だ、嫌でも察しはつく」
ペトラが視線を巡らせ、明かりに光る銀の髪がウィンドチャイムのように揺れる。
そこは事件現場。
学祭一日目の逢魔が時、三人の風紀委員が襲撃者によって昏倒させられた場所である。
敢えてその場所で話したいこと。
加えエリダはマリスタらとも親しい。
妹の話が襲撃者に関するものなのは明白であった。
「だがそうか――人気のないところということは、エリダ。お前、何か掴んだのか? 例えばそう――――ケイ・アマセが秘密にしていることとか」
「っ…………とっくに知ってた感じね。まさか」
「監視してたに決まってるだろう? お前は要注意人物のマリスタ・アルテアスの友達で、今も何やらコソコソ動いてる、ミエミエなんだよ。私に解らないとでも? これまで私に隠しおおせたことなんて何一つないお前のことを。ウソもつまみぐいもおねしょm」
「だだだだだ?!?!? な、なんてこと思い出させんのよ昔の話でしょ?!?」
「お前がそんなことをする必要はないんだ。エリダ」
「――――」
姉は妹の前まで歩き、諭すような口調でそう言う。
途端、エリダは萎むようにして開きかけた口を閉じ、押し黙っていく。
「これまでも言ってきたろう、『お前までが危険な道に踏み込まなくていい』と。今回の件がそれだ、知れば知るほどお前の身が危うくなるかもしれない。これ以上思い悩まなくていい、だから後は私に任せろ。さあ話してくれ、ケイ・アマセが隠していることは――」
「やめてよ。その口調」




