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「少女、動転」




◆    ◆




『ケ――――ケイさん。ご機嫌麗しゅう??』



 面白い顔で何かを告げるマリスタに――とはいえやはり自分の名前以外の部分は聞き取れないので――、圧のある笑みだけを返して、自分の口元を指差ゆびさす。

 マリスタは口元と昼食の乗ったトレイを確認し始めた――誰がこの歳で食事で汚れた口など指摘してきするか――が、システィーナは俺の指摘してきの意図を察したようで、指先を赤く光らせながらマリスタに見せる。

 マリスタは真っ赤な顔で俺をにらんでシスティーナにならった。お前が勝手に間違えただけだろ。

 取ってきた食事には、まったく手が付けられていない。よほど楽しく談笑だんしょうしていたようだ。話題はともかく。



「あれ、アマセ君。図書室に行ったってマリスタに聞いたけど――」

「あ、アマセ君が借りたいって言ってた本がちょうど貸し出し中だったの」



 システィーナの言葉に答えたのは、俺の背後を付いてきていた桃色ももいろの髪の少女、パールゥ・フォン。最近は昼休みによく図書委員の仕事をしていることもあり、こうして連れだって歩く程度には親交のあるクラスメイトになっていた。

 マリスタの目が丸くなる。



「パールゥ? あれ、今日って昼休み図書委員会の仕事だったんじゃ」

「うん。今日は昼休みの途中で当番が終わりだったから」

「そ。それでなんで、アマセ君と一緒にいるのかしら? パールゥ」



 システィーナが意味ありげな視線でパールゥに問いかける……しとやかに見えて、意外と下世話な邪推じゃすいをする奴だ。

 パールゥはパールゥで顔をせてしまう。他意たいは無いのだから堂々としていればいいのに。ぽかんとしているのはマリスタだけだった。

 ともあれ、いらぬ被害ひがいを受けているパールゥをこれ以上傍観(ぼうかん)も出来ず、助け舟を出す。



「目的地が一緒だっただけだよ、深い意味はないんだ――――俺が探してたのは君だよ、マリスタ。放課後に少し、時間あるかな」

「へぇっ?」



 ぽかんとした表情から一転、マリスタが不意に授業で指名された時のような声を上げる。

 見れば横にいるパールゥとシスティーナもあっけにとられている。

 ……何か、この国のマナーにでも反したのだろうか。



「あの……そう緊張しないでいいんだけど」

「は、は、は。はい! じ、じかんはありますがっ! い、一体どうおつつつきあいすればっ」



 ……人選じんせんを間違えたか。

 いやしかし、シャノリアが捕まらなかった以上、こいつくらいしか変に波風立てずに頼める相手がいない。まったく難儀な話だ。



「なんでそんなに緊張してるの……? ちょっと込み入った話になるから、そうだな……俺の部屋まで来てくれないかな」

『!!?』

「へやぁぇぅっ!??!!」

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