「知恵くらべ」
手枷足枷。
目隠し。
耳栓。
囚人服。
猿轡。
たかが学び舎の生徒一人に、ここまでの拘束をしてこようとは。
意識が薄い。体に力が入らない。口の中が干乾びている。
この冷たい床に投げ出されて、もうどのくらいの時間が経っただろう。
ほんの少しな気がするし、途方もない時間が過ぎた気がする。
だが、そうなった理由だけはハッキリしていた。
口に押し込まれた布製の猿轡が、俺の魔力を唾液と共に吸い取っているのだ。
――――どうしてだ?
ただの生徒にここまでして、アルクスの目的は一体どこに――――
体が押さえつけられ、耳栓が抜かれた。
蹴り転がされ、続いて猿轡が解かれる。
「魔力は?」
「どうにか立てる程度に削れています」
「座らせろ」
体が浮く。背後の壁に押し付けられる。後頭部を軽く打った。
滑るように尻の下にやってきた硬い感触の上に座らされたのが分かった次の瞬間には、潰さんばかりの力で顎を掴まれ、持ち上げられた。
聞き覚えのある声だ。
「答えろ。敵は王族の誰だ?」
〝ふふっ、ってことはやっぱり――あんたが頼れるのは、わたししかいなかったってことなのね?〟
「――――あ。うぅ」
「しらばっくれるのか。お前の意識が言語表現のできる程度に残っているのを、俺が把握していないと思うか」
「うぇ゛。ぇ?」
「上手いものだな。痴れたフリが」
頭を壁に打ち付けられた。
あまりの衝撃に耳鳴りがし、目玉が痛みを訴える。
英雄の鎧下にない状態で後頭部を打たれる感覚には、何度遭っても慣れそうにないな。
「どうして意識があると言えるか教えてやろう。フェイリーもそうだったからだ」
「………………――――あいつも拷問にかけたのか。見損なったよ、アルクス。いや、ガイツ兵士長」
「潔い所は評価しよう。そのまま全て吐け」
「こんなことが許されると思うのか? 義勇兵の正当性が根幹から崩れ去るぞ」
「大義の為の悪は正義だ」
「聞いたような台詞を並べるな。なぜいち生徒にここまでする。気でも触れたのか、それとも何か目的が――――いや、」
「聞いているのはこちら――」
「この俺と戦争するつもりなのか?」
「――――何?」
――ガイツの声色が変わった。
警戒の色がありありと窺える。
「お前達程度の雑兵の集まりで、我々に勝てると思ってるのか。貴様等を、このプレジアを破滅させるなんて、我々には造作も無いことだぞ」
「…………成程。惜しかったな、ケイ・アマセ。我々をハメるつもりだったようだが、その目論見は失敗だ」
「――――」




