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「まかぬ種の前で、花待つ」



「動かなくちゃダメ。今このときに、私達生徒も動かなくっちゃダメっ」

「だ、ダメって……」「言うけど……ねえ」「何がダメなんだっけ?」「ん? えーと」

学祭がくさいが中止になってもいいの? 私達の劇が潰れちゃってもいいのっ?」

「でも、先生たち動いてるし……」「だなあ。それ待ってからでも遅くないよな」「つか生徒達で勝手に動くの下策げさくってやつじゃね?」「そうよね……」

「学祭も劇も、私達は当事者なんだよ! さっき先生たちに同意したときの気持ちはどうしたのよッ!」

「やかましのだわよマリスタ。ちょっと頭を冷やしなさい」



 もううんざり、とばかりにシータが言う。

 マリスタはキッと彼女をにらみ付けた。



「あーもう。ウザいウザい。そんな暑苦しい目をこっちに向けないでほしいのだわ」

「私達の劇、私達の学祭だよ、シータ。ここで頑張らなきゃダメだってっ」

「だから頑張りようがないでしょうがアッタマ悪いのだわね相変わらず。はるか遠い目標を目指すのは大変結構どうぞご勝手になのだけど、まずは足元に道が無いことを認識しなさいって言ってるのだわ」

「あ……足元に道が?」

「それも解らないの?」



 シータが呆れ顔でため息をく。

 


「私達も動かなきゃって言うけどさ。じゃどう動けっていうの? 学祭の中止と劇の中止になんて、少なくとも私働きかける方法も何も知らないんだけど。あんたにはそれが見えてるのかって聞いてんのだわ」

「それをみんなで考えるの!」

「考えて出るくらいならとっくに案は出てるのだわ。大体ね、ナタリー・コーミレイ先生だってだんまり決め込んでる今の状況で、誰が学祭中止を撤回てっかいさせるほどの妙案を思いつくって――」

「そうやって!!」

「は?」

「そうやって、私達はこれまで何も考えてこなかったんだよ。考えるのは一部の人だけ。私達はそれに乗ったり乗らなかったりで右往左往するだけ!」

「何言ってんだか、そんなのいつ――」

実技試験じつぎしけんの時はケイ任せ!!」



 マリスタが、いっとう大きな声を張りあげた。



「私達はそのとき、貴族が『平民』が風紀委員ふうきいいんが怖くて、自分が差別のまとになるのが怖くてダンマリ。そしてケイが、試験で次々と風紀の人達に勝つのを見てから――――急にケイを応援しだした!」

『!!』



 耳に届く痛撃に、生徒の何人かが身を固くした。

 しかし、シータは眉と目を吊り上げてマリスタを嘲笑あざわらう。



「へェ? あなたがそんなこと言うの初めて聞いたのだわァ。……当然、その当時からそう考えてたのよねぇ?」

「えっ……」

「トボけないでくれるかしら? 記憶はトバされたけどよーくおぼえてるのだわよ? アマセ君とティアルバー君が剣の打ち合いになったとき、確かに誰もかれもアホみたいに湧いてたわね。で? もちろんアンタはその一時の熱狂に乗って騒いだりなんかしてないのよねェ?」

「そ、それは……騒いだけど!」

「は?……は?……はぁ???? お話にならないのだけど??」



 エリダの制止も手で払い。

 生来の性根しょうねを発揮し、シータがマリスタに迫る。



「その時は一緒になって騒いどいて、今度は騒いだ人達を責める? どんだけ底なしの頭空っぽだったら言えるのかしらそんなこと。たな上げ過ぎるでしょ自分のことだけ。そんなのを義勇なんて言わないの、身勝手っていうの。なんで私達がアンタの身勝手に振り回されなくちゃいけないのよ」

「シータやめな、」

「大体、アンタの考えや正義感を押し付けられてもただただ冷めるだけなのだけど? 一人で一体何を小綺麗こぎれいな理想を思い描いてるか知らないけれど、アンタの熱意を私達にまで強要しないでくれる? 何かするなら一人でやりなさいよ無駄だと思うけど。アンタが四大貴族イチ無能なのだけは、ここにいる皆が解ってるんだから!!」

『!!!!』

「シータッ!!!」

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