「歴史の先生」
「そうです、ま、正しく言えば事務員なのですが。アルクスの報酬、すなわちプレジアの運営資金の使い道を最終的に決めるのは理事長です。そうした取り決めは、このプレジアが創設された二十年前から、ずっと続いているのですよ」
「な、なるほど」
「……まあ。それも多少行き過ぎ、学校長と理事長との溝を深めていたきらいもありますがね」
「あのー」
再びギリートが手をあげる。
アドリーは無言で応じた。
「結局、先生は何が言いたいんですかね?」
「というと?」
「『アルクスは理事長の言いなりじゃないのか』って、僕は質問したんですけど。つまり先生の仰ったことをまとめると、アルクスは理事長の言いなり、ってことでよろしいんです?」
「やあ、これは話が長くてすみません。その質問への答えは『いいえ』です」
「へー。そうですか」
「や、ちょ……へーじゃなくてですね、イグニトリオさんッ」
声をあげたのはケイミーだ。
ギリートはといえば、彼女を見てもおらず、ただ何か思索にふけっている。
んぐ、と表情を険しくしたケイミーをアトロがなだめた。
「ふふ、わかりますよセイカードさん。アルクスが理事長の言いなりでないなら今の状況は何だ、ということですよね」
「そうですっ! だって、つまりアルクスは自分たちの意志で、私達を押さえつけてるってことですよね? どうして味方の私達が、アルクスの人達に目の敵みたいに扱われなくちゃいけないんですか?」
「まあ、単純に信用が置けないのが一つでしょう。襲撃者はプレジア内部の者かもしれない、という可能性もあるわけですから。義勇兵コースの皆さんも、何かしら聞いたのではないですか。理由を言わないアルクスではないように思いますが」
『!』
〝差別と偏見と、傲慢と浅薄に満ちた温床で肥え太ったお前達何の力も無い生徒達に!!…………一体何をどう期待して信じろというんだ〟
「……ま、まあ。それは」
「そうでしょう……ですがその他に、彼らには別の目的が――」
「そっから先は俺が説明するぜ」
ドス、と重い足音と共に演習スペースへと入ってくる者。
相変わらずの茶色い出で立ちに堀の深い顔をした教師――ヴィエルナらの担任でもある男、ファレンガス・ケネディである。
「……ケネディ先生。遅いっす」
「黙っとけロハザー。大人には大人の事情があんだよ」
「またきっと博打」
「シャラップだキース!!!」
「みなさん、知ってますからいちいち言わなくていいですよ」
「あんたも俺の味方しろよ!」
「ええと、続きを話してくれるのでしたっけ? ケネディ君」
「ああ、ちっとだけだがさっきの話は耳に入ってた。つーかオメーら、ひとつも疑問に思わねえのか? アルクスのあの強引な態度をよ」




