「見過ごせぬ覆水」
「ここまでの尽力はご苦労だった、だがここからはアルクスが対処に当たる。君らは何も心配することは無い」
「いやいやいや心配するでしょ。『君ら』だなんて、さも僕らか弱き生徒のことを考えてるような口振りで。嘘が付けませんねえ、兵士長♡」
「嘘ではない。事実君たちは生徒で、本来プレジアによって守られるべき立場だ。」
「もったいないと思いますよ? レットラッシュさんが何を報告してきたか知りませんけど――――か弱き生徒達、案外何か新しい情報を持ってるかもしれませんよ?」
言いながら、ギリートがマリスタら圭に近しい者達へと視線を飛ばす。
大半はごく自然に目を逸らしたが、マリスタだけはその視線を正面から受け止めた。
ほとんど背を向けていたガイツが、わずかにその体をギリートへと傾ける。
ギリートは薄く笑った。
「ですから、考え直した方がいいのでは――」
「そうか。では率直に告げてやろう、糞餓鬼」
「――――……」
ギリートの目から笑みが消える。
ガイツが完全に彼へ振り向いた。
「邪魔なんだ、力不足のお前達は。お前達経験の浅い餓鬼共がどんな情報を持っていてどんな小細工を弄してきたかなど知らないし知りたくも無いが、実際にはことごとく相手に不覚を取っているではないか。それが被害者数十名という結果だろう。我々はみすみすプレジアを危険に晒すような愚は犯さん」
「大体相手は王族かもって言われてるんですが、そのへんは勘定に入ってらっしゃるんですか? 王国の重臣や血族の方に危害を加えようものなら、プレジアと王国の関係はもっと――」
「先刻承知だとも。そして事が起こったとき、貴様等には王国と対等の立場に立つだけの力も権力も、何も無いということもな。万年空席の生徒会長」
「…………チ。またそれか参ったな」
「そ……それどういうことですかっ、隊長!!」
マリスタが数歩前に出る。
ガイツが飛ばしたその眼光だけで一瞬すくみあがった彼女だが、肺に一塊の空気をため込み、再度口を開いた。
「力も権力も……必要になるかもしれない、ってことなんですか――――王国と戦うつもりなんですか、アルクスは!?」
「隊長ではない。兵士長だ、私は」
「え……そ、そんなこと今関係」
「アルテアス家の者か。まさか君が義勇兵コースとはな……落ちたものだ、プレジアも」
「――――関係ないでしょって言ってるでしょう!? いいから質問に答えてくださいよ!!」
「二度言わせるな愚鈍、事件への質問には答えん。ろくに防衛術も知らぬお前達では、いつ敵に重要な情報を抜かれるか分かったものではないからな。根本的に使えんのだ、お前達餓鬼共は」
「――――っっ、」
「マリスタ、抑――」
「私達はッ!!!」




