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「朝襲」



 思い出せ、トルトとの戦いを。

 あの男の、身体強化さえ使わない生身の肉体に――ルールで制限されていたとはいえ、俺は英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)を使った状態で手も足も出なかったのだ。

 それでなくとも、痛みの呪いは相変わらず俺をさいなんでいる。

 こんな状態でプレジアの外に出た所で、早々に二進にっち三進さっちもいかなくなるのがオチだ。そのまま命だって落としかねない。



 十全じゅうぜんに力をたくわえ、プレジアの外に、国内を出歩けるだけの基盤きばんを作り。話はそれからだ。

 それまでは今の、無料で力も知識もつけられている破格の環境をみすみす手放すべきではない。絶対に。



 ――頭を戻そう。

 昨日の作戦は上手くいった。とすれば次は――



 部屋のとびらを開いたとびらが、何者かの手によってつかまれた。



「!?」



 反射的に閉めようとした扉が足元で何かにつかえる。恐らくこいつの足。

 一瞬襲撃者か、とも思ったが――眼前に見えた顔は、何度か見たことのある人物のもの。



 であればこそ、解せない。何故こいつが――



「――ペトラ・ボr」

「ケイ・アマセ。お前を拘束こうそくする」



 扉を押さえたペトラの手が開かれて。



 俺に見えたのは、それが最後だった。



「ッッッッ!!!! ッぁ――――!!?」

「!」



 顔に感じたのは液体。次いで目の痛み。

 目玉がひりつくような耐えがたい痛みに体が後退、玄関の段差に蹴躓けつまづいて転倒する。



 転倒した胸に圧迫感。

 しかし俺には、その圧迫の正体が何なのかも知ることが出来ない。



「……夜襲やしゅうって言葉は聞いたことありますけど。朝襲あさしゅうなんて聞いたことないですよ。アルクスの皆さん」

「……剣を下げろ。誰に突き付けているかわからんわけじゃあるまい」



 ギリートの声。俺の上からの声はペトラ。俺は彼女に組みかれているのか。

 それにしてもギリートめ、今の一瞬でペトラに剣を突き付けるとは……今回ばかりは助けられた――もっとも、何が助かったのかは判然としないが。



 俺は今、何を(・・)狙われている?



わかってますよ。たて義勇兵ぎゆうへいアルクス――そして、僕の友達に攻撃を加えようとしている裏切り者」

「裏切りか。それは誰に対してのものだ? なあ、王家の犬(・・・・)

「………………」

「……ペトラ。一体何が目的で俺を?」

「! ほお、さっきの水(・・・・・)は口には入らなかったか。入っていれば舌までしびれていたものを」

「いいから早く答えなよ。それとも、義勇兵ってのは何の理由も無しに住居に不法侵入して住人を殺害する悪漢のめだったかな?」

「答えるのは貴様だ、ケイ・アマセ。これから。ろうの中でな」

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