「飽和するキャパシティ」
「っ……!」
顔を圧迫してくるココウェルの両手を俺の両手でそれぞれ取り、無理やり引き剥がす。面食らったようにココウェルが目を瞬かせ、俺から体を離した。
「ちょ、ちょっと!」
「すまん。また病気の発作だ」
「えっ――」
いつかの俺のザマを思い出したらしく、ココウェルが即座に離れる。命に係わることとなるとあっさり引くようなところは素直なものだ。
などという雑念を打ち捨て、壁とココウェルの胸板(ならぬ胸丘、とでも言おうか)の間をすり抜けるようにして体を自由にする。
「――で、でっ。返事はどうなの――」
「考える時間をくれ!」
一喝、病気のことで及び腰になっているココウェルに追い打ちをかける。
肩越しに見たココウェルは、未だ目をぱちくりとさせ、俺の言葉を受け止めているばかり。
「……考える、時間をくれ。今すぐに王都に行くなんて、俺には」
「はあ? なんでわたしがあんたに合わせなきゃいけないの。だったら今すぐにでも帰っちゃおうかなー」
「王都には行く!!」
「…………え?」
「――――」
「…………、王都には行く。でも今すぐに、着の身着のままというわけにはいかないだろ。行く前に調べたいこともある、だから――」
「じゃああと三日」
「――三日?」
「わたしもヒマじゃないからさぁ。あんたのことをいつまでも待ってるワケにはいかないの。祭りが終われば、こんな掃き溜めにいる用事なんてないんだし?――――だから祭りが終わるまで待ってあげる。今日を含めて、あと三日。それまでに万事整えなさい」
「…………、分かった。三日後、学祭が終わるまでには」
――これでよし。
三日後。それは、俺達がプレジアの不穏分子を一掃している頃だ。
後は――
◆ ◆
――後は俺が、ココウェルを騙し切って言質を取るだけ。
事件に、王女が関わっているのかいないのか。
襲撃者の正体は、誰なのか――
〝騎士に。わたしのものになりなさい〟
〝王都には行く!!〟
「――あと二日か」
「何が?」
「……何でもない。用事があるから先に出るぞ」
――集中しろ、天瀬圭。
お前は今、大きな争いになるかもしれない危険な吊り橋を渡ってるんだ。
ただでさえ、懸念事項は山積している。
ギリート、リリスティア、痛みの呪い、襲撃者、パールゥ。そして王女。
流石に限界だ。
この上、
〝王都には行く!!〟
……この上、余計なものを背負い込もうとするな。




