「大立ち回りの舞台裏」
――夜と変わらない無機質な白い明かりが、部屋を静かに満たす。
早朝。クラス劇の朝のミーティングにも速すぎる時間帯に、俺は既に身支度をすっかり整えてしまっていた。
何かに気合が入っていた訳ではない。
ただ――
〝騎士に。わたしのものになりなさい〟
――寝つきが悪く、眠りが浅かっただけだ。
「んん~ん。んー……あれ。君いつにもまして早いね、今日は。おはよ」
「ああ」
「相変わらず挨拶も出来ないんだな君は。ふわーぁ。朝ごはんできてる?」
「何百回目だその問いかけ。作れんし作らん」
「あいさつは返ってこないけど、これは返ってくるからさぁ」
「起きろ鬱陶しい」
「はいはい。朝から考え事してる君のお邪魔は致しませんよ。ふわ~ァ」
無遠慮な大欠伸をしながら、ギリートが洗面台へと消えていく。
大根役者め、起き抜けの奴の顔がそう整ってる訳ないだろうが。本当に油断ならない男だ。
――思考に戻る。
昨夜の出来事を、一連の作戦を――――俺の演技を、隅から隅まで思い出していく。
◆ ◆
「――――騎士に。わたしのものになりなさい」
「………………!!」
――――――――――思い通り。
〝そりゃあんたと一緒に居たいなんて思う人はいなくなるわけだわ〟
〝いいこと!? この男、ケイは私の――下僕!! 奴隷になったのっ!! ケイは私のモノなのよ!!!〟
やはり、こいつは俺を自分の所有物にしようとしてきた。
騎士の身分を与えようとまでするとは予想していなかったが――いい所小間使いだろう、と思っていた――、ともあれ作戦は成功だ。
ケンカをする風紀と「異端」。
それを見るマリスタら、と……その他大勢のプレジアの生徒、外部の客ら。
俺達のケンカが真に迫るできになるかどうかは、俺達では判断がつかない。それに何より、王女の背後に付く、あの黒い騎士の目を欺けるかどうかは解らない。
故に、「本物」を利用した。
あの場に居合わせた、作戦とは何ら関係無いプレジアの生徒――――風紀と「異端」の、貴族と「平民」の争いを間近で見聞き・体験してきた者達の生の声を。
未だに口を挟まず、どこか楽しそうに俺とココウェルの動向を静観しているだけなのを見ると――――どうやら奴にも、俺が「あと三日間も劇を共にするクラスメイトからも見限られた、プレジアに居場所の無い哀れな男」だと見えているようだ。多少は。
ココウェルの両手の力が強まる。
今にも俺の目にめり込みそうな勢いのある彼女の細い指が、顔への食い込みを強くしている。
逃がさず、今この場での返答させる心づもり、という訳か。
だが――




