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「憐れみもください」



「辛い、って、苦しいって伝えたよね、前に。あの言葉に嘘は無いよ。でも、その『辛い苦しい』だって、私の幸せなの。だから……勝手に幸せじゃないなんて、決めつけないで」



 ……どこか、りんとしてさえいるパールゥの瞳。

 俺はその顔を直視出来ずに、やや視線を落とす。

 彼女に、そんな顔をさせているのは――――辛さや苦しさを幸せだと言いえさせているのは、他ならぬ自分なのだ。



 もし、俺の両親が死んでいなければ。

 もし、俺にとってここが異世界でなければ。

 もし、俺が何の目的意識も無い、十把じっぱ一絡ひとからげな学生であったなら――――パールゥに、こんな顔をさせずに済んだのだろうか。



「…………もし、可哀かわいそうだって思ってくれるなら」

「え?」

「――私を、ほんのちょび~っとでも、あわれんでくれるなら!」



 急に声色を明るくしてうつむき、俺の肩をペシペシと叩きながらおちゃらけてみせたパールゥが、かすかにほおを染めて俺を見る。

 


「……明後日。学祭がくさい三日目の、最後の夜。私とデートして、ケイ君」

「――ああ、分かった。今度はちゃんと――」



 ――扉を破壊したような、激しい音と共に。



 楽屋の扉が、開け放たれた。




◆    ◆




「ッたくもー! あのバカ下僕げぼくは一体どこに行ったってのよ!!」



 劇の会場から出るための列を全く無視し、人ごみの中をツカツカと歩く少女、ココウェル。

 押しのけられた人々は皆一様(いちよう)に不快そうな顔をするが、露出度ろしゅつどの高い彼女の服装と、当たり前のように列に割りり先へ進んでいくその高圧こうあつさとにされ、人々はごく自然に道をゆずってしまうのであった。

 無論、それらにもひるまぬ者は一定数いたが――――彼らもまた、ココウェルの後に続く黒い騎士きし、アヤメから放たれる圧に立ち尽くし、声をあげることもままならぬ。



「ココウェル。芝居しばいの後に役者が観客の出迎えをするのは、小さな芝居ではごく自然なことです。いちいち目くじらをたてぬよう。失礼しました」

「いちいち指摘してきしてくれなくてもけっこっって言う前から謝罪するの止めてくれる?!?!? 誠意せいい欠片かけらも感じられねーんですけど?!?!」

「バレないための配慮として対等に振舞っているまでです、ココウェル」

「チッ……都合よく使いやがって――あ?」



 ぶすくれた王女は、程無ほどなく客を出迎でむかえる役者達の列に出くわす。

 しかしどこを見ても、目当ての金髪の少年は見当たらない。



「おいアヤメ、このバカ。いねーじゃねーかあいつ」

「ですね」

「ですねじゃねーよ。このわたしに無駄足むだあしませたのかお前」

「私は『あいつ』の居場所など一度もかれてはいません」

「この…………おい貧乳ひんにゅう! ケイはどこ居んのよ!」



 目についた赤毛を、さも当然のように罵倒ばとうして呼ぶココウェル。

 しかし、

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