「ユニアの愛」
予想外の単語に言葉が止まる。
パールゥが俺をキッと見た。
「ユニアはクローネが好きだった。でも、タタリタとクローネが好き同士だって分かってた。だから、戦力的にもいい相棒同士だった二人の為に身を引いて、二人の導く世界を、少し離れたところから見守ることにした――――私はそんなユニアが嫌いでたまらないの。この物語を読んだ時から。今だってそう」
「……最初は、タタリタを希望してよな」
「うん。だって報われない恋なんて幸せじゃないから。誰だって報われたい、自分に振り向いて欲しいって思うものでしょ? それがこの子は、ずっと傍で眺めているだけで終わる。タタリタがいなくなっている間でさえ、ユニアは二人の仲に踏み込もうとはしなかった。在り得ないよ、って思った」
涙を拭い切り、すん、と鼻を鳴らして、パールゥが俺を見る。
話が見えず、俺は顰め面をしていた筈だ。
「……でも。今日、改めて。やっぱり違うな、って思ったの」
「? 違う?」
「私、ずっとケイ君に抱き着いてたでしょ?」
丸眼鏡の奥で悪戯っぽい笑みを浮かべ、パールゥが言う。
「ずっと抱き着いていた」、というのは恐らく劇中の、ユニアがゼタンとの戦いに赴くクローネと抱き合ったシーンのことを言っているのだろう。
この笑みを見る限り、その行為自体は何ら反省していないらしい。
全くこいつは。
「……もうああいったことは止した方がいい。その後の段取りが全部狂うし、何より鬼監督が黙ってない」
「うん。もうしない。あれはやっぱり間違ってるって思うから」
「さっきも言ったな、『違う』って。何のことだ」
「うん。あれは――――ユニアの気持ちじゃないなって、思ったの」
神妙な顔で、パールゥが俺の手を取る。
されるがままに甘んじた。
「私は、自分をもっと見て欲しいから、君に触れる。ユニアだってきっとそうだと思った。だから、君を長く抱き締めてみたんだけど…………その時間が長くなれば長くなる程、『これはユニアじゃない』って、思っちゃったの。どんどん、私の中にあるユニアが小さくなって……私は、舞台上でも私になっちゃってた、気がした。思い知ったの。ユニアが、どれだけクローネを――――タタリタを、想っていたか」
「…………タタリタを、か」
「私にはできない。私には理解できない。でも、それこそがユニアの愛で――――幸せだった。……ってことじゃないかな、って、思う。『幸せの形は一つじゃない』ってのは、どんな本にも書かれているようなありきたりな言葉だけど……その意味が、やっとちゃんと理解出来た気がするの」
「……そしてさっきの話に戻る、か」
パールゥが俺の手から離した手を、そのまま自分の胸に置く。




