「第2幕、第10場。終幕」
「…………、…………!」
真っ二つになった体のまま、竜態へと変態しようとするゼタン。
しかし、何かに苦しむように呻きを上げ――――彼は、元の人間の体に戻った。
解らず、見上げる。
天から、まっすぐにゼタンを見下ろし、魔剣の切っ先を自分に向ける黒騎士を。
その剣尖に、青い魔波が収束する。
その光景に、神は見覚えがあった。
「…………そうか。貴様なのか、ヌゥ」
神ヌゥ。
人間に与し、神の力を分け与えた、戦争の火種を創った張本人。
故に役目を解き、死という罰を与えた。
役目を終える間際、ヌゥは見せたのだ。今、クローネが放とうとしているものと全く同じ魔波を。
演出で、光によって投影されたヌゥがクローネに重なる。
青い光に飲まれながら、ゼタンは瞠目を引っ込め――――ただ、人間の騎士に笑いかける。
「…………見ものだな。過ぎたる力を手にした者達が、どのように世界を滅ぼすのか」
「――――――」
極光。
ついで、大爆発。
噴火した火山。
最後の力を振り絞って火山の外へと飛び出でたクローネは、どこか辛そうな面持ちで、吹き荒れる火砕流と溶岩を眺めた。
「……滅ぼさせたりするもんか。絶対に」
◆ ◆
タタリタら人間達の選択。
それは、人間と神が共存できる社会を目指すこと、だった。
戦火に潜み、密かに神と繋がり、神々に共存できる策を持ちかけ、これを了承させた。
その上で、たった一人人間との共存を拒否したゼタンを取り除き――――長らく続き、夥しい犠牲を出した神と人の戦争は終結を迎えた。
これより、戦いを終結に導いたタタリタとクローネは、「英戦の魔女と大英雄」と、後世に語り継がれることとなる。
その二つ名に、喪失感をしっかりと刻み込んで。
「クヲン……カンデュオ……」
「……人間と違って、神は…………死体も残らないんだな」
「いつまでそんな顔してんの、二人とも!」
「……タタリタ」
「お前も、少しは悲しんだっていいんだぞ」
「忘れない」
『!』
「時はどんどん前に進んでる。いつまでも悲しんでたって始まらないし、それがクヲンやキュロスの手向けになるとは思えない。だから悲しまないで、忘れないことにした。『英戦の魔女と大英雄』――――この名に刻まれなかった、たくさんの犠牲の先に、今現実は、私達の未来はあるんだってこと。生き残った私達だからこそ、忘れずに、未来を謳歌しなきゃいけないってこと」
タタリタに扮するマリスタが、舞台の中央から前面に躍り出る。
どこからともなく舞い降りた花弁が、タタリタの掌に握られた。
舞台は暗転。
そしてしばらく後、机に向かったユニアだけにスポットライトが当たる。
「――――こうして、天上天下の境は無くなりました。これが、魔法世界の始まりであるという伝説が、今も語り継がれています」
走らせていた羽ペンを止めるユニア。
彼女が、小さな笑みを浮かべながら目を細めて。
舞台の幕は、ゆっくりと下り切った。




