「第2幕、第9場――①」
◆ ◆
舞台裏のギリートが、小道具の剣を握っていた手を数度握り、開き――――ポツリとごちる。
「……折れなかったなぁ。結構、力込めたんだけど」
〝柱は待とう、騎士クローネ。この神の座で、お前を〟
〝いいだろう。精々のんびり踏ん反り返っていろ』、神ゼタン〟
――舞台上でギリートの目に映ったのは、とても彼の眼鏡に適う人物ではなかった。
ただ病気に苛まれ、ただ役を、与えられた役目を全うするだけの、貧相な男。
(でも、あれは折れなかった)
無気力に細められた目の奥に、燃える瞳を輝かせ。
ギリート・イグニトリオは、興味を失ったように手から視線だけを逸らした。
◆ ◆
ゼタンが掲げた手と共に、ディオデラの拳が振り上げられ――――ゼタンとクローネの居る活火山の中に、拳の落ちた地鳴りだけが響いた。
「お前以外のすべての人間は、今死んだ。もうお前に、戦う理由は無くなったぞ。最後の一人」
クローネが、剣を落としかけたそのとき――――天から降り注ぐ一筋の光のように、通る声が木霊する。
〝諦めないで! クローネッ!!〟
『!!?』
神と人が驚愕する。
聞こえた声は、確かに――――神によって殺された筈の少女の声。
そして。
〝せっかく柱々が協力してやるのだっ!! せめて命消えるまで足掻いてみせよっ、人の子よ!!〟
〝力になれるかは解らんがね。神の端くれなりに、足掻いてみせるつもりだよ〟
「――――こやつら、」
「プデス……キュロス……、」
〝そうだぞクローネッ! 神二人が味方になんだ、後のことはドーンと任せてアンタは突っ込みなッ!!〟
〝こっちは抑える――そっちは頼んだよ、クローネッ!!〟
「…………クヲン…………カンデュオ…………」
聞こえた声は。
脳裏に浮かんだその姿は。
契約に感じたその存在は。
〝勝つよ、クローネ。残ってる人たちみんなみんな守って、絶対勝つよ!!!〟
独りの騎士に、那由他の希望を奮い立たせる。
「…………タタリタ…………!!!」
クローネは久しく見せなかった笑顔でゼタンに向き直り――魔力を爆発させる。
「!!」
◆ ◆
『おおおおっっ!!!』
――――極光が四辻に伸び、機神を縛す。
機神はその光を引き千切ろうと身じろぐも、一向に千切れる気配が無い。
それも道理。
その光は、ただただカラクリの神を縛す為だけに創られた――――神の魔術なのだから。
『うおぉぉぉぉ――――――ッッ!!』
機神を囲む四点の魔力溜まりを形成するのは、生きていた二人と二柱の神――クヲンにカンデュオ、そしてプデスとキュロス。
人と神の膨大な魔力を糧として、捕縛陣は尚も機神を捕らえ続けている。




