「第2幕、第8場――⑤」
「必ず希望は来る」
「……来る?」
クローネが、眉一つ動かさずにゼタンに応える。
「そうだ。必ず来る。今は希望を見出せず、絶望しかないように思われる種族だとしても――人間には、あんたらが備えてくれた『希望に生きたいと願う心』を誰しも秘めている。その心がある限り、俺達は信じ続けられる。人間の可能性を。希望はまたいつか、必ず俺達の前に現れることを!」
魔剣が青みを帯びる。
クローネの背後に控える剣が、一様に青き輝きを増す。
そんな彼を見て――ゼタンは、初めて顔を怒りに歪めた。
「綺麗事のように語りおって、馬鹿が。自らの劣等性を直視することさえ出来ず、そうして言い訳を垂れ流す貴様のその姿こそが人間の限界だと言うておるのにな。…………絶望してしまいそうだ。我が作品の醜悪さに!!」
ゼタンが、起源剣イディクリスを大地に突き刺す。
みるみる地面が隆起し、膨れ上がり――――マグマをそこかしこから吹き出しながら、爆ぜ尽くした。
「っ――――!!」
目を見開き、クローネが跳ぶ。
彼の靴の先を、熱の泥が撫ぜた。
溶け落ちた靴先を確かめる暇も無く、辛うじて無事な足場へと着地する――
眼前にゼタン。
「!!!」
振るわれた剣に応じるも、迫り負けたクローネがマグマへと弾き飛ばされる。
騎士は空中で転回、空気を蹴って素早く次の足場に着地そこにも既にゼタン。
「チッ――!」
高速回転させた青い剣でゼタンの体勢を崩し後退させるクローネ。
神が別の足場へと移動。
突如吹き上がったマグマの柱が神を隠し、
柱が真っ二つに裂けた。
斬撃が飛来する。
刹那合わせたクローネの魔剣からも魔力の斬撃が迸り、爆風。
飛び散ったマグマを避けるように二人が飛び――ゼタンの居る足場へと、クローネが着地した。
「――――」
「おおぉぉ――――っ!!」
赤と青の剣光が交差する。
手数は圧倒的にクローネが上だ。
とはいえゼタンの剣速も神業の域。
後手に回ったクローネには、背後の青い剣を振るう余裕など無い。
――そして、現実的にも。
「――――」
全く無感情に、休むことなく剣を振るうゼタン。いやギリート。
その目はここでないどこか遠くに向けられているように昏く、これが演技であることを忘れてしまいそうになる。
いや、実際意図的に忘れているのではないか、こいつは。
でなければ――――この手に握る剣が、またも折れそうになっていることに説明が付かない。
間違いない。
挑発だ、これは。




