「第2幕、第8場――③」
「っ……!」
予定された動きをなぞるだけの、いわばダンス。
しかしそれさえ、今のこの身体には負担が大きい。
〝イラつくな。心静かなら、呪いはさして騒がねえ〟
呼吸を切らすな。
出来栄えなんて考えるな。
そんなものは全て二の次にして――――今この瞬間を、乗り切ることに集中しろ。
そして――
「…………」
「っ!?」
――違和感。
それを感じた時には、一度目の剣戟は終わりを告げていた。
ゼタンに弾き飛ばされ、床を転がるクローネ。
黒騎士が極限まで技を磨いていようと、相手は神。
神が生まれ持つ、文字通りの神業を前に、人間であるが故完璧には至れないクローネの剣は太刀打ちできないのが道理なのだ。
「…………」
剣を支えに起き上がるクローネ。
薄ら笑いを浮かべ、その様子を見守るゼタン。
「そうら。火山が哭いている。お前の魂を呼んでいる」
「そうかな。俺にはお前を呼んでいるようにしか聞こえない」
台詞を繋げながら、ギリートと目を合わせる。
静かな青い目が、静かに落胆を語った。気がした。
剣を握る手に感じた違和感。
その感覚を覚えている――あれは、ギリートが俺の握る剣をへし折ったときと同じもの。
何のつもりだ、ギリート。
ここまできて、芝居をメチャクチャにするつもりか――――
――駄目だ。応じるな。
刹那、目を閉じる。
時間にしてほんの数瞬だ、芝居には影響しない。
〝今の力の最大限、君の粋を見せてくれ〟
ギリートはあのとき、そう言った。
だが俺はまだ呪いに苛まれ、奴に力の粋を見せられる状況にない。
今、あいつの求めに応じることは出来ない。
最優先にすべきことは――――
「おおっ!!」
二度目の応酬。仕掛けたのはクローネだ。
クローネの気合と共に、ゼタンの剣と打ち鳴らされた魔剣ルートヴィスハイゲンから、粉雪のような青い魔素が散り――――それらがいくつもの剣を象ってゼタンに向く。
「!」
魔剣の軌跡を辿り、たったひと振りで十五もの多段攻撃を見舞う魔素の剣。
魔弾の砲手のように滞空し、主に付き従い攻撃を加えるその魔術にゼタンは押され、とうとう自分から大きく距離を取り、
「――ああっ!!」
黒騎士が翳した手に呼応し、融合して巨大な剣となった青い魔力が、ゼタンの肩口を斬り裂いた。
客席へと吹き飛び、倒れたゼタンが体を起こす。
至近距離の客は当然、驚きにポカンとしている。
「――それが最強と名高き黒騎士の剣か。さてどう攻略したものかな」
「それだよ」
「何?」




