「第2幕、第8場――②」
「……何故ここに居ると思う? たった一人の人間を壊すのに、何故あれの膨大なエネルギーを使う必要がある?」
「――――貴様、」
「呵々、やはり人間は…………いや、こう言った方が良いかな?――――やはり貴様は救いようのない愚か者だ。馬ァ鹿が」
ゼタンが悪を演じ、クローネをせせら笑う。
そんな悪の感情など、彼は持ち合わせてはいない。
ただ「究竟意志」――彼自身を創り出したと推測される存在の為、少しでも多くの精神力を集める為。
目的をもって生み出されたシステムとして、神ゼタンは存在し、全てを成す――――
「――――なんてな」
「……!? 『なんてな』だと?」
「ああ。お前達は、このくらいの話し方の方が理解しやすいのだろう?」
ゼタンは、まるで軽薄な若者のような笑みを浮かべる。
「お前は思ったろう。それを言うなら、この宣戦布告そのものに意味が無かったと。先の戦いの延長線上で、俺達をディオデラで潰せば終わっていただろうに、と。まったくその通りだ」
「……ゼタン、お前は」
「そうともさ、これは無駄だ。時間の空費、存在の冒涜、無意味なる徒労!……だが気付いてしまったのだ。徒労の忘却に、このオレは愉悦を感じていると」
「………………」
「そうとも、これは遊興だ! オレの心にただ一つ、全く無価値な火を灯す!!!…………お前との、対等なる敵同士としての時間だ」
「キモい」
クローネは、ただ嫌悪感を表明する。
俗語を理解するのに時間を要したのだろう、ゼタンはややあって――――飛び散る溶岩と共に、この上なく。
楽しそうに、哄笑した。
「……………………、 。キモかろう?」
赤き切っ先が黒騎士を捉える刹那。
最後の戦いは、激しく幕を開けた。
◆ ◆
会場の無人空間、至る所から岩と溶岩の飛沫が現れる。
観客のどよめきの中――――クローネとゼタンはそれらを足場としながら、観客の目の届く上空を縦横無尽に駆け回り、剣戟を応酬する。
無論、俺達はどちらも英雄の鎧は使っていない。
万が一にも、予期せぬ破壊で観客に怪我は負わせられない。
つまり、岩から岩への長距離移動は全て――魔法演出班、風属性魔法担当による技術の結晶なのである。
風に乗りながらの移動には、慎重で緻密な稽古を入念に繰り返した。
リフィリィによれば、演劇部でさえここまで本格的な演出は行われないという。
全くとんでもないことを要求してくる監督だ。
……ともあれ、本当に気にせねばならないのはそこではなく。




