「第2幕、第8場――①」
――離れていかない。
いつもならどちらともなく、程よい時間で離れる筈の俺とパールゥの距離が、一向に離れていかない。
いや、回りくどい言い方は止そう。
パールゥが、離れない。
長過ぎだ。
舞台袖の、シャノリアらの焦りが伝わるようだ。
本来ならばとっくに暗転し、次の場面へと移り変わっている筈の時間であろうことは、今かかっている音楽の進み具合からしても間違いない。
だが、物語の都合上突き放す訳にも――
――まったく。
これまでにないほど、強い力でユニアを抱き締める。
自分で長引かせておいて、彼女も予期していなかったのだろう。
急に締め付けられた体を伝い、パールゥの口から悩ましげな吐息が漏れた。
俺は甲冑。
彼女は布の服。
ああ、それなりに厚い衣装で良かった。
満足したのか、パールゥがゆっくりと離れる。
切なげな瞳に、あくまでこちらも応え、大きく頷く。
まだ舞台上だ、非難がましい目を向けられる筈も無い。
尤も裏に引っ込んだところで、アレコレ話す時間はないのだが。
ただ後ろを向き、とにかく舞台を去った。
「おかえり。――あれは彼女の勝手?」
「ああ」
俺にだけ聞こえるシャノリアの小声に生返事を返し、音を立てないように腰の剣を抜いて右に持つ。動きを止めずに別の出捌け口へ向かう。
ユニアがクローネの身を案じるシーンが早々に終わり、舞台は暗転し――――暗闇から、赤々とした亀裂が浮かびあがった。
地を揺らすような轟音、次いで吹き荒れる火の粉、元い溶岩の飛沫。
暗闇の中で移動し定位置に着いていたギリートの背後に、騎士クローネはゆっくりと姿を現した。
「――今まで俺は、お前が石像か何かのように思えてならなかった。他二人の神が創り出した、まさにカラクリのようなものだと」
「違う。あの二柱が壊れていたのだ。神の身でありながら感情に――」
「じゃああんたも壊れ者だな。今となっては」
「――そうだな。お前達を生み出しただけのことはある、ということか。まったく不完全である。だからこそ」
ゼタンが、前に手を翳す。
途端。亀裂の奥にマグマを滾らせる地がボコリと隆起し――大地を鳴動させるようにしながら、やがて一振りの大剣を取り出した。
ゼタンは身の丈にも及びそうなその大剣を小枝のように二、三振るい――――同じく、流麗な掘り込みを仄かに光らせる青き魔剣を構えるクローネへと、向き合った。
「――あの巨神はどうした?」




