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「第2幕、第6場――③」



う――――おおおおぉぉぉぉぉッッ!1!



 ――――この叫びを野太くするためにだいぶ練習し、一度は声をつぶした。

 地鳴りに負けない叫びをあげ、大地の津波から逃げるクローネ。

 しかし結局は逃げきれず、クローネとタタリタは――



 ――大地が突如とつじょ、加えられた力の向きとは反対側にうねる(・・・)

 大地はそのまま収束し巨岩となり――ディオデラの頭部に、隕石いんせきのように空気を貫き突っ込んだ。



「――――タ――――」



 突然、意志を持ったかのように動き出した大地。

 こんな大魔法(・・・・・・)を操れるのは――――



「――タタリタッ! その体で何をやってるんだお前!!!」



   (逃げて)



「――――え?」



 最早どこからがってきているかも分からない血を、吐き出さぬよう懸命に口を閉じたまま、タタリタがクローネに話しかける。



          (希望の灯は、きっとま)    (た灯る。)

       (ここで火種を、)          (絶やすわけにはいかな)   (い!!)



 ――飛んできた一棘いっきょくの大木が、一瞬で圧縮・解放された空気砲(・・・)で砕け散る。



 血みどろのタタリタの眼光が――――悠然と空を歩くゼタンを射殺いころさんばかりに貫いた。



「――魔力回路(ゼーレ)活性化の恩恵おんけいか。まったく死ににくくなったものだ。厄介な」



 タタリタは応えない。

 応える余力などもう、残されていない。



          (逃げて――生きて!!)



 だから、もう振り向くことも無かった。



「――――――――ッッ!!!」



 口をきそうになる叫びをこらえ。



 クローネは、音も無くその場に背を向ける。



 背後の轟音。

 飛び去る眼下がんかに映るのは、戦場すらも消え失せたき出しの星の姿。



 やがて、戦いの音は去り。

 魔波さえも、届かなくなって。



 タタリタの気配は、完全に消え失せた。



「クローネッ!? タタリタは――」

「気配を遮断しゃだんしてくれ」

「え?」

「気配の遮断だ、ゼタンに気付かれる前に!――早くッ!!」



 クローネの言葉に、タタリタの結末を悟り。

 込み上がり振り切れそうになる感情を、口に手を当てることで何とか押しとどめ。



 ユニアは魔法を展開し、自陣じじん全域の気配を遮断した。



 ――沈黙。

 意識を保っていた生存者達が、一人また一人と二人の下に歩み寄り――その様子から、戦況を悟る。



 のち、ようやく動き出したクローネが確認する。

 タタリタの魔波は全く感知できず。



 非戦闘員の集う城塞じょうさいは、跡形あとかたもなくなぐつぶされていた。




◆    ◆




 守るべき者が、何一つなくなってしまった事実。

 もはや人類に戦う理由は何もなく、そして勝てる見込みも全く無い。



 否。そもそも人間達にとって、既に事態は勝ち負けなどという言葉で語ることの出来る段階ではなくなっていた。



 人間を駆逐するためだけに創られた機神きしん、ディオデラ。



 その存在を淡々と語り、クローネは言葉を切る。



 誰も、何も言わなかった。

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