「第2幕、第4場――①」
「な――――何が――――っ!!?」
魔法そのものとなったクヲンが、光の波動となって岩を破砕していく。
破砕直後に再生する岩の壁。
ならば、破砕と同時に懐に飛び込めばいいだけのこと。
『うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!』
クヲンの化身化を察知し、首の皮一枚ならぬ岩の皮一枚のところで、持てる魔力を全力でその一枚に注ぐプデス。負けじと吼え、渾身の魔力を注ぎ込むクヲン。
空間が捻じ曲がるほどの魔波が、障壁さえ巻き込み。
タタリタ達の目の前で、爆ぜ消えた。
「……クヲ、ン」
空さえ吹き飛ばさん勢いの爆発を、呆然と見つめるタタリタ。
プデスも、そしてクヲンも。
以後、皆の前に姿を現すことは無かった。
◆ ◆
「やったぜエリダ!!! 成功したじゃんか!!!!」
「痛ただだだだ。アホマリスタ、やめ……」
「マリスタ。それだと首が締まる」
「あっごご、ごめん!」
「うん……いい……」
舞台セット裏で、尻餅を付いて座り込むエリダ。
その肩は未だに上下していて、荒い呼吸も不規則だ。
義勇兵コースでもなく、英雄の鎧も使えない。
稽古から本番まで、とてつもない運動量であったはずだ。
それでも、エリダはやり切った。
大したものだと思う。
「あと頼んだからね、あんたたち……っ」
「――ガッテン!! エリダもしっかり休んでてね!」
「うん……」
それきりタオルを首に、エリダは俯いて動かなくなった。
疲労困憊だな。そっとしとこう。
さて、次は。
マリスタの、見せ場のシーンか。
◆ ◆
「はっきり言え、ゼタン。プデスは死んだのであろう」
「…………解らん。だが、あの戦い以来魔力を感知していない」
「……在り得ぬっ。神を……親も同然である我らを手にかけるなどとっ!」
「まったくだな」
「なんなのだ先程からその生返事は!! プデスが死んだと聞いて貴様、事の重大さが解っておるのかッ!」
「おうとも」
「次は君か、それとも我か……悠長に構えている暇はないと、まさか解らんのか?彼らの凶刃は――――今にも我々に届こうとしているのだぞッ!」
「だから戦わないことにした」
「…………何?」
ロハザー演じるキュロスが、ギリート演じるゼタンの言葉を理解出来ず、まるで変質者を見るような目で顔を顰める。
しかしキュロスのテンションとは裏腹に、ゼタンは実に落ち着き払った顔で手を止め、キュロスを見た。
その手には、怪しい光を放つ文言が記されている魔術書がある。
「……君、それは何だ?」
「彼奴等が魔法を操るようになり、我々と同じ次元に立ったために、我が目論見は狂うたのだ、キュロス。我はそれを元に戻すことにした」
「元に戻す? 君が何を言っているのか解ら――――」
「少し。戴いた」
「…………!?」
キュロスが目を見開く。
鼓動するかのように魔術書が震え――――ゼタンの手を離れて空へと昇っていく。
放たれるその力を、キュロスははっきり覚えていた。
「……ゼタン、貴様……『供物』に手を出したというのか!!」
「すべては我らの存在理由のため、そして元は我が集めた心の力だ。少々借りたところで、意志は我らを罰さぬよ、キュロス」




