「第2幕、第3場――③」
当然、あの光の波動も――――裏方の、魔法演出担当による工夫と努力の賜物だ。
音と光と、動きを合わせ。
縦横無尽に舞台を駆け巡る手順を、一つも違えず。
無軌道な動きに耐えられる身体を、維持し。
百以上に及ぶ練習の経験も、疲労も。
今のエリダには、その全てが蓄積されている――――
「おおおおおおっっ!!!」
進んだと思ったら急停止。
停まったと思ったら、光の波動。
足の発条を常に最大限に使った動きで、魔法戦士クヲンはプデスとの距離をじわり、じわりと詰めていく。
「あと半分……半分だよッ」
漏れ聞こえるマリスタの声援。
祈るように手を組んで見守るパールゥ。
だがエリダがスタミナを切らし、コケることが多いのはここからだ。
シャノリアは、そんな彼女に一切の言葉をかけることは無く――そして、エリダも無限に繰り返される練習に、いつしか弱音一つ吐かなくなっていた。
何が彼女にそうまでさせたのか、俺は知らない。
単なる維持かもしれない。見えないところで、シャノリアにいたらない発破をかけられただけかもしれない。
たかが劇で何をそんな糞真面目に、と思ったこともある。
でも。
「プデス――――ッッ!!!」
そこにはきっと、彼女にとって譲れないものがあって。
その瞬間に賭けた、何かがあって。
「終わりだ!!」
そう推し量るには十分な程――――この心は、舞台を打ち揺らすクヲンの強い足音に、鷲掴みにされている。
不安になる程の、背後の舞台セットが見えなくなる程の岩塊が、ついに二人が居る場所目前まで迫る。
クヲンの放った光の波動が目前数センチの岩を砕き続けるが――――光の及ばない部分の石は、既に彼女の体を障壁へ押さえ付けるまでになっていて。
「くっ――――そぉぉぉぉぉぉぉ――――ッッ!!!」
岩が、クヲンの頭を圧迫する。
側面から迫った岩によって、体を成り立たせるクヲンの骨が軋みをあげてへし折れていく。
圧殺。
次に予想される凄惨な光景に、客が目を塞ぎ始めるのが目に浮かぶようだ。
少しだけ思う。
本当に、クヲンという女性はこんな目に遭ったのだろうかと。
こんな逆転劇を、繰り広げたのだろうかと。
「――――?」
プデスが片眉を開く。
これは恐らく、クヲンから知覚出来る魔波の質が変わったのを察知し描写ではないかと、俺は推測している。
「ずらぁぁぁぁァァッッッ――――!!!」
「!!?」
「化身」という存在に触れ続けていたクヲンだからこそ、為せた芸当。
この土壇場で、彼女は――――自らを魔法と化したのだ。




