「第2幕、第3場――②」
プデスが叫ぶ。
と同時に、彼の手の中で――ごく小さな石ころが生成され、空間の中央へと飛んだ。
あんな魔法が、本当に存在したかは分からない。
分からないが――――その魔法の持つ魔波に対面したクヲンは、これまでに無い程顔を狼狽させた。
「チィッッ!!」
クヲンが手を引き、そこに空間が歪む程の魔力を収束させ、放つ。
光の波動は小石とその後ろに居たプデスをあっさりと飲み込み――――弾き消された。
「ッ!!?」
頭程の大きさに巨大化した、小石によって。
否。それは既に岩石と呼ぶべき大きさだ。
弾かれ後退し、体勢を立て直したクヲンの前で――舞台上でその岩石は、更に、更に大きく膨張し――――
――クヲンは確信する。
この障壁の内側、空間そのものを岩で埋め尽くそうとしていると。
「っ――――ンのおッ!!!」
クヲンがプデスへ駆ける。
岩が空間を蹂躙する前に、何としても術者を止めなければならない。
しかし――
「う、わっ……!?」
まるで山が迫り出るように、不規則に膨張していく岩石がクヲンの行く手を遮った。
次々と道を変えプデスへと迫ろうとする金髪の少女。しかし岩石は、意志を持つかの如く妨害を繰り返し――――いつしかクヲンの視界は、半分以上が岩に覆われていた。
「クソっ!!! 何考えてんだプデス、こんなことしたらお前も生き埋めだろうがッ!!」
クヲンがプデスを見る。
プデスは鋭い目で彼女を見つめるばかりで、答える様子は無い。
それまでの多弁はすっかり鳴りを潜め、まるで別人だ。
故に、これからの一分は――――エリダ一人の独擅場と、ならなければいけなかった。
俺の横に居るマリスタが、身を硬めた気配がする。
向かいの舞台セットの間の出捌け口から見ているリフィリィ、パールゥも、固唾を呑んでエリダを見守っている。
この劇で一番手こずっていた殺陣が、始まる。
「っ――――ぁあああああああッッッ!!!」
エリダが地を蹴る。
と同時に、突き出て迫った岩石を――光の波動で吹き飛ばし、穿たれた穴に体を滑り込ませた。
「ッ!?」
これには腹を決めたプデスも目を見開く。
そうしている間にもエリダは岩を波動で削り、プデスへと迫りつつあった。
「プデス――――ッ!!!」
「――――甘いわッ!!!」
削り取った岩が。
一瞬で、復活した。
「なっ――――!!?」
質量や生成時間など、世界の法則をまるで無視した「魔法」。
クヲンは――エリダは歯噛みしながら急に足を止め、――――まだ進める余地のある場所へと一足飛びに走る。
エリダは魔術師コースの人間だ。
普段から体を鍛えている訳でもなければ、瞬転が使える訳でもない。




