「第2幕、第3場――①」
空塊を砕き。
豪腕より放たれたクヲンが、閉じかけた障壁の小穴に飛び込んだ。
『と――――届いたァ!!』
人間達の歓声。
しかし、一足遅れて辿り着いたクローネは――――全く別の感情で以て、雲を吹き飛ばした球状の障壁を叩いた。
本来なら障壁の中には、二人で突入する筈だったのだ。
もう、中の様子は窺い知れない。
加勢することも叶わない。
クヲンは、たった一人で神を相手にしなければならない。
「…………クヲン…………!!」
舞台が真っ暗になり、暗転を挟む。
暗闇の中舞台セットが回転、舞台上の景色が全く違う色へと変わる。
時折、暗闇の中で音が鳴る。
多くは、観客が緊張を解き姿勢を変えた音や咳き込む音だが――中には、役者が舞台セットや客席に躓いて出した音も混ざっていることもある。
本当は音を一切たてずに、最速で舞台裏へ戻るのが最良だが……なにせ暗闇の中だ。
俺も無音で忍び歩けるまでに、相当な時間を要した。
そうした時間との格闘の甲斐あって、再び照明が灯ると、客の見る景色は一変している。
真っ白な舞台上には、ただ向かい合うエリダ――クヲンと神プデスだけが残されていた。
――ここは、個人的に気になっていたシーンでもある。
「やっと近くで対面できたな……プデス!!」
「くっ……」
「覚えてるか。お前が殺した人間の顔を。私のダチの顔をッ」
ズシリ、と踏み出すクヲン。
プデスは下がろうとするも、そこは既に障壁の端。
「やっと戦える……やっと死んでった仲間達の借りを返せるッ」
「……か。神を殺すのか? 我々が死ぬと思っているのかっ」
「思ってるさ、そして事実お前らは死ぬッ!!……殺すことが出来る。それがヌゥの置き土産だ、殺したテメェが一番よく分かってんだろうがッ!!」
「――――――、……」
プデスが顔を伏せ、――静かになる。
ここからだ。
「――――いいだろう」
「あ?」
「今ここが、瀬戸際なのは理解した――――命を守るのは、もう諦めよう」
「!!」
プデス役の男子生徒も演劇部である。
それ故か――このシーンのプデスの化け具合は、恐らくこの芝居内で一、二を争う怪演に見える。
表情、声色、そして纏う雰囲気――――どれをとっても役者が変ったかと見紛う程。
そして、それに伴い求められたのは――――エリダが、彼の演技に張る演技が出来るかどうかである。
エリダの持つ素質はなかなかのものだ、とシャノリアは言っていた。
体も柔らかく表情も感情も豊かで、見る人の目を惹き付ける存在感もある。
エリダはエリダのままで、クヲンという人物を演じられる要素を持っていた。
――ただ一つ、戦闘経験を除いて。




