「第2幕、第1場――①」
「……改めてあのシーンはありがと! ごめん!」
パチン、と小さく手を鳴らして合わせ、謝罪の意を示すマリスタ。
一幕の中で、台詞をトチった場面について言っているのだろう。
「ああしたことは誰にでも起こるだろ。次は気を付ければいいだけだ」
「そうだね!! 気を付ける!!! 切り替えた!!」
「早いな。もう少し落ち込め」
「どっちよ?! へへへ」
薄暗いが、どこか顔を赤らめているようにも見えるマリスタ。
第二幕に挑む気合は十分の様だ。
「……それに、あれで貸し借り無しになっただけだ」
「はい?」
「俺もお前に助けられたからな。……ありがとう、マリスタ。夕方の変なイベントのときは助かった」
「――――」
闇の中で真顔になる少女。
その顔に、どこかキスを終えた後のタタリタを感じた。
「――い、いいってことよ!!?」
「てっ――なんで殴った今ッ」
「なっ、なんでも?!」
「ったく……照れ隠しも程々にしておけよ」
「分かってるなら理由聞かないでよ?!?!? ……あーじゃなくて、違う。こんな話をしに来たワケじゃなくてね」
「呪いならいつも通りだ」
「ちゃんと喋らせて?!?! 先読みされたら会話にならないでしょがっ」
「他には?」
「会話にならないでしょって!!!」
「お……おい静かにしろ。表に聞こえるぞ」
「ひをっ」
珍しい叫び声と共に口を塞ぐマリスタ。
着込まれた軽装の鎧が、カチャリと音をたてた。
「……やれんの?」
「ん?」
「イグニトリオ君とのアクション。やれるのかってこと」
「やらなきゃ劇が終わる、二重の意味で」
「やる気なのね。うし」
マリスタが短く拳を突き出す。
無言のまま、その拳を軽く殴った。
◆ ◆
人間は、ほぼ全員が魔法を使うことが出来るようになった。
勿論練度に差はあるものの、塵も積もれば山。
更に巨大な戦力アップを果たしたタタリタとクローネの力も加わり、たった三人しかいない神を相手に、人間達は次第に優勢に戦うようになっていた。
しかし、それも長くは続かない。
神々は、人間のように食べ物や飲み物を必要としない。
対し人間は戦いが長引けば長引くほど、兵糧の心配をしなければならない。
限りある資源の下、限りある戦いを強いられるのだ。
そして何より――――「何がどうなれば」戦いが終わるのか、全く見当もつかないということである。
何故神は、たった三人しか戦に出てこないのか。
今戦っている神々を討ち果たしたとして、また後任の神がこの戦いを続けるのではないだろうか。
厭戦感。
皆、戦いに疲れ切ってしまっているのである。
不安、恐れ、疲労が、次第に人間達の心を絶望に染めていく。
そしてそれがまた、神々にとっては求めるエネルギーへと繋がっていく。
人々は思わずにいられない。
結局のところ、自分たちは手のひらで転がされているだけではないか、と。




