表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
634/1260

「第1幕、第5場――②、実際役者などはどう感情に整理をつけているのだろう」



「……へ?」



 あからさまな動揺を見せるクローネ。

 対したマリスタは、こちらをロクに見ようともしない。



 いや、練習に比べればいくらかマシになった方だが。

 それにしてもたかが芝居しばいで、若干の照れから顔を赤くするだけならいざ知らず。



「……魔法を使えるパートナーと、くちびるちぎりを結ぶことで……魔法は、次元の違う力へと一段階、進化するん……だって」



 耳まで真っ赤に染め、今にも泣きそうな顔でこちらを見上げてくるというのはどういう、その、アレなのか。



 こいつがシャノリアに劣らぬ絶世ぜっせいの美少女であることを、こうして時たま強烈に思い出させられる。

 出会ったあの日。

 寝間着ねまきで俺の部屋に来た日。

 俺の肩で力尽きた日。

 俺の前で泣き崩れた日。



 事あるごとに、何故こいつはこうして――――俺の心に、不意打ちで冷水れいすいをふっかけてくるのだろうか。



 そしてその顔は本当に、なんだ。



 台本には無い。

 恥じらいながらも真っ直ぐに想い人を見上げ、しかし戦いの中である今は思いを言葉にはせず、ただ目と唇で気持ちを確かめ合う――――そうした儚さと意志の強さをあわせ持った存在が、戯曲ぎきょくに書かれている魔女、タタリタなのだ。



 結局マリスタは、ただの一度も筋書き通りにこのシーンを演じられぬまま、



「………………」

「っっっ!!!」



 迫るクローネの唇を、ただ固まって受け入れた。



 客席のざわめきが聞こえる。黄色い声援まで聞こえた。



 触れたか細い両肩が、俺の手の下でビクリとねる。

 おかげで俺の手のひらまでいやに鋭敏えいびんになり、毎度気を使う。

 だがこれも台本の筋書きで、そしてシャノリアは鬼監督おにかんとくだった。



 だからあたかも本物の口付けに見えるよう、二人の口の間にだけ物理障壁がかれることになったのだ。



 俺が唯一ゆいいつ持ち得る、幾多いくた呪文(ロゴス)を組み合わせて開発した独自の魔法――――魔術盾の砲手(エスクドバレット)が、まさかこんな所で役に立つなどと誰が予想出来ようか。

 当時の俺の機転きてん喝采かっさいを送りたい。



〝ごめんなさい、圭。ごめんなさい――――〟


〝これがお前の結末だ〟



 だってそうだ、芝居しばいとはいえガチの口付けなど死んでも御免ごめんだ。パールゥからの殺意だってすさまじかった。

 余談だが、このシーンのパールゥの机に伏せさせたのは監督と、なんとシスティーナの案である。一応、ウィザードビーツのライブチケットの件を至らぬ方向に導いてしまったことへの借りを返したつもりらしい。



 光が舞う。

 地面に演出班の傑作けっさくである魔法陣まほうじんが歯車のように組み合わさって描かれ、み合った陣が回りながら光を発し風を起こす。



 神の悪戯いたずらか、この演出がまた長いのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ