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「第1幕、第4場――①」

「い、いや……」



 ――何かザラザラした痛いものが顔面に当たった。

 慌てて周囲の舞台セットを確認する。――幸い、舞台が崩れてきたわけではないようだ。一度リハーサル中に崩れて大変なことになった。



 手元に落ちてきた飛翔体ひしょうたいの正体を、やっと確認する。

 それはボロ布に包まれた、舞台セットにも使っている木材の切れはしだった。



 ――――ご丁寧に怪我けがを負わせぬよう、配慮された上で投げつけられたのか。



 誰かが意図せねばこんな加工物が飛んで来る訳が無い。

 嫌な予感がし、飛んできたであろう方向――目をふさいでいるリフィリィの肩口を見ると、



「…………………………」



 ツン、と素知らぬ顔をして明後日の方向を見る、パールゥの姿があった。



 …………一歩間違えばリフィリィに当たっただろ。コレ。

 いやまさか、本当は彼女に投げるつもりで……?



「ま――まだかかるかな?」

「あ――いや、悪い。すぐ着替えるッ」



 ――表の声を聞くに、今は戦闘シーンの中盤。

 急げばしっかり間に合う。



 ――こればかりは、説教してやらねば。



 布を足元に打ち捨て、俺は貫頭衣かんとういの留め金を外した。




◆    ◆




 戦にまぎれたゼタンの暗躍あんやくで、ヌゥは暗殺されることとなる。



 タタリタ達は怒りに燃え――戦いは、ヌゥ殺しに関わった三柱さんにんの神々との戦いへと展開していく。

 物語序盤(じょばん)に出てきていた神キュロス、プデス。そしてゼタンだ。



 しかし。



「なんなんだよあの力の差はァっ!!」

「お、おい落ち着けクヲン! 騒いだって皆が不安になるだけ――」

「誰も亡くしてねぇお前にはわかんねーのさカンデュオ!!」



 エリダ演じるクヲンがものすごい剣幕けんまく怒鳴どなり、カンデュオという名の少年の胸倉を引っ張り上げる。

 とても少女とは思えない剛力の持ち主である。



「や。――やめろよ」

「私はね、親兄弟友人恋人、何もかもを神に奪われたんだ!! はらわたなんぞとっくに煮えたぎって炭化して空炊からだきになってんだよこっちはッ!! それが何だ? 大人達も、タタリタ達も揃いも揃って!! 私に希望を与えておいて絶望に突き落としやがってェェェッ!!」

「――だったら今から一人で行って殺されでもしてきたらどうだっ!?」

「ンだとテメェこの――」

「やめろ、やめ――やめろって二人とも!!」



 クローネがクヲンとカンデュオを引きがす。

 クヲンは石くれを飛ばし、カンデュオは片手で頭を抱えて座り込んだ。



「……どだい無理な話だったんだ。神に勝とうなんて考えが」

「カンデュオ……」

「クローネだって間近で感じただろ? 同じ魔法の力を手にしたと言ったって、あんなに規模きぼ威力いりょくに差があるなら話にならないよッ!!」



 ――問題はそこだった。



 魔法を信じ、一大勢力で戦いを挑んだ人間達。

 しかし神々は、彼らに魔法の粋など一片たりとも見せてはいなかったのだ。



 人間が魔法を行使したことに驚きこそすれ――神と十の力で渡り合い、歓喜した人間達は、その直後神が見せた百の力で絶望のふちに叩き落とされ、無残に敗走したのである。



 そしてまた、それが神の力の限界であるとは到底思われなかった。



「……今ならまだ、間に合うんじゃないか?」

「間に合う?」

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