「第1幕、第3――もう勘弁してくれ」
「味方はせぬ。ただ……常から我は、こう思っていたのだ。彼我の間に争いが絶えぬのは、人間が神と同等の力を持っておらぬからではないかと」
「同等の……!」
「ゼタンは考えられぬと言った。賛意を示した者も居るには居ったが、皆任ぜられた使命を果たすのみ。我等もまた、それぞれに役割を持って生まれ出でた存在故な」
「……ではどうして……ええと……神様、は……」
「……『ヌゥ』だ」
「ぬ?」
「ぬ……ヌゥダ??」
「ではなくて。ヌゥ、が我の名だ。今まで名乗りもせず、あい悪かった」
「あ、いや、別に……私達の仲でしょ!」
「……有り難う。……そう思うからこそ、我は他の神々のようにはなれぬのかもしれんな」
「え――」
「授けよう。柱々の力を。そして見せてくれ。神に並んだ君達が、どのような道を歩むのかを」
手を翳すヌゥ。
途端水蒸気が顕われ、飲み込まれる舞台。
生徒たちの手によって上手く掛け合わされた光と水が、そして遅れて現れた火の玉がやがて一瞬にして姿を消し、舞台は暗転、客にも役者にも何も見えなくなる。
この闇の中での移動が、またネックだ。
無論、俺達にだけは見える工夫が、舞台上にはなされている。要所要所に客からは見えぬ光が引かれている。
しかし、それも微かに目印になる程度で――少しでもタイミングを誤れば、
「ぅっ?!」
「っ?!」
――このように、激突の憂き目を見る。
今の声は誰だったか。急な叫び声で判断が付かない。
ともあれぶつかった相手から離れ、怪我などせぬよう前方を手探りしながら――――
「ひゃあぅっ!!??」
「!?!すまんッ」
――――何か柔らかいものに正面から触れ。
秒でその正体を悟り、コンマで謝罪を入れた。
「ご、ごめん私もハケ口間違っ――」
「とにかく裏にッ」
聞こえるか聞こえないかの声でそう交わし、舞台セットの裏に引っ込む。
ここからしばらく、俺の出番はない。
神と人間の戦いを、コロス――――所謂映画でいうエキストラのような、一人で名を持たぬ役を何役も演じ分けるような役回りの者だ――――が演じ、彼らを魔法を使いこなすようになったタタリタが率いて進む、といった内容のシーンに移るためだ。
この隙に、俺も衣裳を替える必要がある。
舞台裏には、勿論衣裳係は居ない。
自分で着替えることになるわけだが――
「――――あ゛。もしかして、君……ここで衣裳を??」
――すっかり動転した様子のリフィリィ・フェルトニスが、暗がりにも判るほど紅潮した顔を引き攣らせ、貫頭衣の前を隠すようにして俺を見ているのは、非常に困る。衣裳的に前屈みなのも絶大に困る。
……マリスタやパールゥならともかく。
元い、あいつらでも最低の行為だ。
恐らく俺はこいつの――
――――頭が、疼いた気がした。
「さ、さっきは悪かった」
「い、いやいやっ。私がっ、戻る場所を間違えたんだからっ」
「そ――そう言ってくれると助かる。じゃあその――」
「え?――――え、あ、ああああっ!! う、うんわかった! みっ、見ないっ!これで見えてないから!!」
これまで見たことも無い程に顔を狼狽させたリフィリィがぐしゃぐしゃと銀の長髪を両手で集め、それで顔を隠して俯く。
演劇部としての自負もあっただろうが――元はマリスタが巻いた動揺の種だ、そう気に病むことではない。
しかしホントに長い髪だ、システィーナといい勝負かもしれない。髪もむ――――
閑話休題して死ね。俺。
「……き、着替え終わったら声をかけるから゜っ??!」
「!? ど、どうしたのっ!?」




