「第1幕、第3場――②」
土塊を蹴散らし、烈風と共に空から降ってきたモノ。
質量を持った雷のように湾曲した影が三人を飲み込み、巻き上げた土を雨あられと降り被せた。
絶妙なタイミングで合わせられた音響、照明。そして土属性魔法の成せる技である。
「ぷえ、ぺっ……ゆ、ユニア! だいじょぶ!?」
「くっ……まさか、神がここに――!?」
身構える三人。
果たして砂埃の向こうから現れたのは、
「――嗚呼、嗚呼。果たしてこの身は付いているのか、いないのか」
「はッ――――」
八メートルはあろうかという体長の、白き鱗を持つ長髭の竜。
「――白竜……!!?」
「嘘……どうしてこんなところに竜種がッ、」
「嗚呼、騒ぐでない、ない。若人の高声は、いやに傷に響く」
「というか、しゃべってるっ……?!?!」
あんぐりと口を開けるタタリタ。
身構えたまま固まっているクローネ。
ユニアだけが言葉をしかと聞き取り、白竜の身体へ目を向けた。
「ッ……ひどい傷……! 血が溢れてるっ」
「むやみに触らぬことだ。どんな呪いがお主を焼くか知れん」
「呪い?……白竜、あなたは…………神に傷付けられたのですか?」
竜が、人の拳ほどもある目をバチリとさせ、目玉を一瞬ぎょろつかせる。
「神」という言葉を聞いたとき、白竜は少しだけその鱗をザワつかせた。
「ど、どうして神が竜を攻撃するの? そんなこと聞いたことも――」
「タタリタ、待った。――――ユニア。治療に必要そうなものは?」
『!!』
ユニアとタタリタが、驚きの表情でクローネを見る。
白竜が一瞬目玉を剥き、やがてその厚い目蓋を僅かに下げた。
「…………愚かな子だ。我の傷を癒そうと言うか」
「では受けるのだな、治療を。ユニア」
「う――うん。包帯をありったけ。それとアロエの軟膏、針と糸を。タタリタは水と清潔な布を。お願いできる?」
「わ――分かったッ! 死ぬほど持ってくるから!」
「了解。針と糸は――通りそうないから、竜の鱗でも縫合できそうなものを都合して、持ってくるよ」
「お願い」
クローネ、タタリタが一時去る。
ユニアはしばらく前からもごもごさせていた口から唾液を吐き出し両掌に擦り込むと、躊躇うことなく、未だ泥のような血を流し続ける竜の傷に触れ、傷口を弄り始めた。
「……なんと恐れを知らぬ」
「大丈夫よ。これまでも、神に付けられた傷口から呪いが移ったことなんて、ないから」
「!…………嗚呼、そうか。このような小娘でさえも、駆り出されているのか」
「だから今は黙って。命を繋ぐことに集中して」
「…………」
以降、白竜は何も言わず。
ユニアによる手慣れた治療が功を奏し、体を回復させていく。




