「第1幕、第3場――①」
暗闇の中、ロハザーらの舞台裏での働きによって、舞台中央の背景に墓標が追加される。
十四歳になったタタリタは、無数に突き立つ墓の丘で泣き崩れていた。
成長したユニアも悲痛の面持ちで彼女に寄り添い、クローネはそれをただ見守る。
「……今度は、おじさんの番だった。そういうことだよな」
「クローネっ。今そういう――」
「あっていいのか?」
「――え?」
「こんなことが……ただ神の餌食になるためだけに生まれただなんて、そんなバカげた話があっていいのか?」
「――――」
「父さん……父さん……ッ」
激情に支配された二人にかける言葉を見つけられず、座り込んだタタリタの背に頭を預け、ただ俯いて途方に暮れるしかできないユニア。
吹き荒れる怒りと悲しみ。
のち湧き上がる反逆の火と、心底で燻る確かな絶望。
そして適度に刈り取られる戦力と、神々が望むモノ。
もう何度繰り返したか知れない、神への心の製造工程。
「……いっそ、やめちゃったらどうなのかな」
「はっ?」
頭に血を上げたまま振り向いたタタリタに、ユニアは気後れすることなく告げる。
「神様に、逆らうの。そしたら、今迄みたいなペースで供物を集められなくなるわけじゃない? そうしたら――」
「――あいつらは私たちの心が湧き立つだけで、望むモノを手に入れる。今更戦いをやめたところで、あいつらは私たちの心を手に入れ続ける! 解ってるでしょユニアにも。変な気休めを言わないでよっ!」
「でもそれじゃあ神の思うつぼだよ!?」
「だとしても、戦いをやめるのは難しいよ、ユニア。俺達に心があるからこそ」
「……心が」
「大切な人を、幸せに生きられるはずだった未来を奪われて、皆怒りと悲しみに満ち満ちている。それにここで戦いをやめてしまえば、これまで死んでいった全ての人達は犬死にだと、そう考える人も出てくるだろう。その人たち全てを、俺達だけで止めようとすれば。――今度は、俺達の中で分断が起きる。そしてそれも、また神々の思うつぼだ」
「…………じゃあどうしたらいいの?」
ユニアの頬を、押し込められた激情が伝う。
タタリタが怒りに任せ、地に手を打ち付け続ける。
クローネは苦しげに目を閉じた。
どうしようも、無かった。
「……せめて、私達にも」
神との間にある、文字通りの天地の差。
「私にも、あいつらと同じ力があれば」
魔法を使える者達とそうでない者達。
それは最早、戦力差などとは形容し得ない。
「――神を斃せる力があればッッ!!」
人である限り避けられぬ、「死」を克服しようともがくような、摂理への反逆とでも言うべき絶望感だった。
故に。
『――――ッ!!?』
彼らは、神へ近づく道を選ばざるを得ない。
「――――誰、なの?」




