「第1幕、第2場――①」
◆ ◆
「……掴みはバッチリだな」
「そうかしら。私はエンギエンギしてて見てられないのだわ」
「エンギエンギってなんだよ……君はまたそうやって斜に構えた見方をして」
「るさい。劇は静かに見るのがマナーなのだわオボッチャマ」
(この子は……)
「つまんなっ。ねーむたっ」
「ココウェル。上演中は黙るのがマナーです」
「うっせーな。大体回りそんなに客居ねぇじゃない。人気無さ過ぎて笑うわ」
「まあ、一介の学生演劇ですからね。そして周囲に居ないのはあなたが胸糞悪い悪口を撒き散らしたからです、ココウェル」
「一言多いんだよお前はッ。てか誰も真面目に見てやしねーって」
「私は見ていますよ」
「……あ?」
「ですから、お静かにしていただけると助かります」
「おや。君と一緒になるとは。コーミレイさんだよね」
「……どうも、サイファス・エルジオ先生」
「君に先生と言われるとこそばゆいな、なんか。小さい頃はマリスタ入れて三人で遊んでたから――」
「覚えていません」
「手厳しいな……ていうか君、この劇の関係者だろ? 舞台袖で見なくていいのか?」
「好き好きです。観劇中なので集中させてくれると助かります」
「はは、ごめん。そうだね、だって今からが――君が一番見たいシーンだろうからな」
◆ ◆
「神様キックっっ!!!」
「あでっ!」
ずべしゃ、と吹き飛びながら舞台へ出る。どよめきと興奮が、観衆から伝わる。
顔を上げた先には、俺と同じく貫頭衣の少女。衣裳班の多大なる努力により、その服はあたかも布一枚以外何も着ていないように見え――――観衆の一部からは、そうしたマリスタの――もとい、少女タタリタの――姿を拝めたことによるべとついた熱気を感じる。
「う、う。うぇぇぇええ~~~ん」
「ああっ。だ、ダメだよタタリタっ。またクローネを泣かしたぁっ」
「もっとつよーくなりなさいっ、クローネ! わたしたちは、カミサマとおなじくらい強くならなくっちゃいけないんだからっ」
「むりだよぉ……おしりいたいよぉ……」
「よしよし、さすさす。痛いのいたいのとんでけーっ」
「ユニアはあまやかしすぎなのっ! おシリさすっていたいのがなおるかっ」
「こわいよ~っっっ!!!!」
「なーもー!! 泣くななきむしくろーねー!!!」
「おにばばタタリタ~!!!」
「なきながらハンコウしてるのはこの口かぁ!」
「あ゛~」
「あーもうほら、二人ともー!」
自分をある意味、捨てること。
それが演技の極意だと、鬼監督は語った。
全てのプライドを投げ打って、俺はここにいるのだ。
くそったれ。
地獄のシーンがようやく終わり、それぞれが舞台の中央、右、左(左右をそれぞれ下手、上手というらしい。知るか)に位置取る。
「ぐずっ。だいたい、なんでカミサマと同じくらい強くなくちゃいけないの?」




