「開場、舞台裏で」
◆ ◆
「全員、集まった!?」
『はい!』
照明に照らされた舞台の上で、取り取りの衣裳と化粧に身を包み。円になった役者達が、めいめいに応と叫ぶ。
プレジア大魔法祭、一日目夕刻。
ニクラス合同の演劇『英戦の魔女と大英雄』が、いよいよ初演――一回目の本番を迎えるのだ。
「実質三週間の練習期間、そしてそれぞれに他の出し物や学業も抱えた中で、あなた達は力の限り稽古してきたわ。散々しごいてきた私が言うんだから間違いない」
「茶化すなハイエイトッッ!!」
「げえっ聞こえてた?!」
「ったく。……ま、彼が文句を言いたくなるのも分からないではないけど。それくらいには、妥協なくあなた達を追い詰めてきたと自負してる。本当にごめんなさい――そして、付いてきてくれて本当にありがとう」
シャノリアが、充実した笑顔を見せる。
それはいつも見せる儚げなそれとは違う、溌溂とした力を感じさせる笑みだった。
本当に好きなんだな、芝居が。
「今できる、最高のものが仕上がったと思います。責任は全部取るから、あとは舞台で思い切り楽しんでおいで。その姿を、きっと観客も心待ちにしてる」
『はいっ!』
ビリビリと空気を震わせる声を受け止め、シャノリアが円陣の中央へ手を差し出す。
……そういうのは好きじゃないんだが、ここまできて皆の士気を下げられない。観念して手を重ねた。
すぐにパールゥが手を重ねてくる。俺の視線に、彼女は笑って応じた。
「――――やるぞッ!!」
シャノリアの一喝。
鞭打たれたかのように応じる生徒達。
円は収束し、そして――舞台裏に散った。
「よろしくお願いします!!」「っしゃァ!」などといった声が散り散りに聞こえる。
そこまでの熱意は持てないが――どこか鼓動は、早い気がした。
「頑張ろうね、ケイ君っ」
「ああ」
「色々あるけどっ……今だけは忘れて集中してこーねッ!!」
駆け寄ってくるパールゥ。
バシンと俺の肩を叩き、去っていくマリスタ。
これから数十分は、舞台裏での待機時間。この間に客入れを行うのだ。
パールゥと共に、薄暗い舞台裏へと引っ込む。
「……ドキドキする?」
「ああ、少しな」
「ケイ君でも緊張するんだ」
「そりゃあ」
「ふふ。あ、小道具確認しとかなきゃ」
薄い板と角材、垂れ下がった布などに挟まれた舞台裏。
所謂大舞台のような緞帳は無く、役者は皆舞台セットの間に忍ぶようにして、客の熱気と気配を感じ取り、静かに一喜一憂する。
主に役者が持ったり、身に付けたりする小さな道具――小道具はそんな役者達の足元に纏められており、舞台裏は意外とごちゃごちゃしていた。
「ケイ君は、ちゃんと剣持ってる?」




