「に手を伸ばす、それが」
「――――いや、そりゃそうだけどさ。それが難しいって話を――」
「オーダーガードさんは何か対案が?」
「それ――は、ないけど」
「じゃあそれを考えるしかないのでは? ちなみにその王女自体が偽物で、敵が王国と全く無関係の馬鹿共の集まりだった場合は、問答無用でトルト・ザードチップ先生に撃滅していただけばいいのですよね」
「ンで俺なんだよ……」
「たとえ話です」
「…………?」
……なんだ? ナタリーの奴。
誰とも目を合わせず、どこか呆けた顔で……
「でも、すごく難しい話なのは確かよ、コーミレイさん。それでなくても、私達は『大魔法祭に来ている外部のお客さんに不安を与える事が無いよう、秘密裏に事件を片付ける』必要があるのだし。戦闘にしろ拘束にしろ、騒ぎにならないようにすること自体が難しいわ」
「八方塞がりな案件ですね、それはまた」
「そんな他人事みたいに――」
「ナタリー」
シャノリアを遮り、ナタリーに近付く。
彼女は神妙な顔で俺を見た。やはり様子が変だ。
「お前、何か思い付いたことでもあるんじゃないのか」
「……いえ別に? 少し疲れているだけです」
「?……そうか」
「ま、つまりだ。奴らへの対抗策が思いつかない以上――お前さんはくれぐれも深入りするべきじゃねぇってことだぜ。アマセ」
「深入り?」
「おう」
トルトが茶を飲み干し、俺を見る。
「アルテアスの嬢ちゃんから聞いた話じゃ、あれは王女の従者なんだろ。あからさまに探りを入れりゃ、その従者が止めに入ってくるのは見えてるじゃねぇか。それでも無理に訊こうとすりゃ戦闘になる。つーか、王女がボスだったら王女に探り入れた時点で戦闘になるかもしれねぇ。戦闘って手段を選べねぇ俺達にゃ、取れる選択肢なんて無いに等しい、そうだろ?」
肩まで届く横分けの髪を垂らしながら、ぐるりと周りを見渡すトルト。
閉塞感だけが、場を支配した。
〝俺を――――俺達を信じてくれ、フェイリー。きっと、この事件の解決に役立ってみせる〟
……勇み足だっただろうか。
結局、俺にも打つ手はほぼ無い。
どう転ぶか解らない手段が一つ、思い付くだけだ。
それ以外は問題だけが山積して、それをどう片付けたらいいのかも分からない――
手が痛む。
知らず、壁に手を打ち付けていた。
気持ちは、ビージに負けず劣らず急いている、ということか。
「……くそ」
どうすればいい。
どうすれば、この閉塞を――
「ま、やるしかねぇか」
「――――ぁ?」
一瞬、誰の声か解らなかった。
視線を、部屋の中央に戻す。
トルトが、俺を見て――――珍しく、小さく笑っていた。
「ヤキが回ったモンだな、俺も。後悔させんじゃねえぞ。アマセ」
「、……どういう意味だ?」
「ヘンなとこで頭の悪りィ奴だなお前さんは。危うい道は承知の上、俺はそれでもお前さんの賭けに乗るって言ってんだ」
「な――」
「はっ――あなたとこんなに意見が合う日が来るとは思いませんでしたよ、ザードチップ先生」
ベッドに腰掛けていたテインツが立ち上がる。
トルトは彼を一瞥し、鼻をしゃくって応えた。
「アルクス相手にあんな大見得を切ったんだ。ハナから後戻りなんて考えてないよ。僕も乗った。ま、皆もだろうけど?」
「テインツ――」
「そうだな。お前が言ったモンより冴えた案が思い浮かんでるワケでもねぇ。やれるだけやってやるさ。で? 俺達ぁどうやっておめーをイジメ抜きゃいいんだ、アマセ」
「響きワリーからイジメって言うなよ……オラ、とっとと話せよアマセ。作戦のこまけー所をよ」
「…………おま」
「それ以上ゆーなッ!」
「!」
ビ、と人差し指を突き出して俺の動きを制し、マリスタが笑った。
「何べんも言わせないでよね。私達は、アンタを信用してここに集まってんの。自信ないからって、それを何回も確認しないよーに!……そう、野暮ってやつだからね!」
「――――、――……ああ。そうだな」
息と共に。
呆れ笑いが、零れた。




