「もてあそぶ魔性」
「ああ。正真正銘、お前が会いたがっていた――――」
飛び起き、魔女の肩を掴む。
図らずも、俺はすぐ隣のベッドに魔女を押し倒す形になった。
「……、…………」
乱れた髪の下で、一分たりとも焦りを見せない瞳が輝く。
その光を湛えた目で彼女は、俺をただ静謐に見詰め返してきた。
こうしてその体に触れることで、その体温を感じることで――出会ったときに感じたような希薄さはまったく無くなり、今はただ現実感だけが其処にある。
魔女リセルは、間違いなくこの手の中に存在している。
その吸い込まれそうな淡い金色の瞳に向かって、言いたいことは山とあった。
あったはず、なのに。
「…………っ」
いざ向かい合ってみると、何一つ言葉が出てこない。必死で言葉を探すうちに、見えなくていいものばかりが目に入る。
見れば見るほど、その少女は「魔女」と呼ぶにふさわしい魔性を備えていた。
長い睫毛。吸い込まれそうな瞳。透き通るような白い肌。表情が醸し出す儚さ、あどけなさ。か細い体に小さな肩。蠱惑的な呼吸音、かすかに上下する、体に比して量感のありすぎる胸。そして魅力的に膨らんだ――――小さな、唇。
知らず、その柔らかさを思い出す。
そんな彼女を目の前に、俺は、
「……舐めるなっ……!」
それだけ絞り出すので、精一杯だった。
「……どういう意味だ? それはつまり――」
そんな俺の胸中を、知ってか知らずか。魔女は、
「――今ここで。お前を怒らせた『罰』を、私の体に刻もうというのか?」
肩を掴む俺の手に手を重ね、顔を寄せるようにして――――扇情的に頬擦りし、小さく笑ってみせやがった。
触れられた手がやたら敏感になっている。
早まる鼓動、呼吸。生唾を飲み込みたい衝動。
魔女の肩を握る手に力が籠る。
――――馬鹿にしやがって。
「舐めるなと言ってるんだ……!」
「…………それはこっちのセリフだぞ。童貞」
――声のトーンが変わったと同時に、魔女は肩を掴んだ俺の人差し指を思い切り曲がらない方向へと引っ張った。
「ッ!?」
情けないほど簡単に手は外され、肩を掴まれ。気が付けば、先程と全く逆。俺は魔女に組み敷かれ、体に跨られていた。
「弱いな。そんな非力では、女を押し倒しておくことも出来ん」
「お前……っ」
「さて、どうしてやろうか。お前の世界では、少年を拐かした魔女はその子を自分の色に染め上げて飼い慣らすのだったか? それともこうして――食べてしまうのだったか」
瞳を妖しく光らせ、「あーん」と言わんばかりに口を開き、微笑む魔女。




