「最大の障害」
「な――ナタリーも知らないの? ううん……なんていうかね、もうホント考え方が……愚か。うん、愚かなの。わがままでゴーマンで――」
「そ、そうなのか、アマセ?」
「…………その辺にしとけよ。マリスタ」
「え?……あ、うん」
「そう、その辺はどうでもいいことだ。大事なのは」
マリスタが黙り、トルトが口を開く。
「結局、その王女かもしれねぇ奴の口を、お前さんが割れるのかどうかだ、アマセ。お前さんの言う作戦は、その王女かもしれねぇ奴から真実を聞き出せることが絶対条件だ、そうだろう? お前さんが知りうるそいつの性格を踏まえた上で……出来るのか。王族に取り入りお前を信じ込ませ、全てを聞き出すなんて大それたことが」
全員の目が、俺へ集中する。
〝ふふっ、ってことはやっぱり――あんたが頼れるのは、わたししかいなかったってことなのね?〟
「――……可能だ。百パーセントは保証できないが、邪魔が入らなければほぼ間違いなく上手くいく」
「じゃ……邪魔? それって、あの横にいる騎士の子のこと?」
マリスタの声。
俺は努めて表情を崩さないようにしつつ、彼女を見た。
「確かにそいつも脅威だろう。だが俺が言ったのは――――パールゥ・フォンのことだ」
「……あ……」
マリスタがそう漏らし、全てに納得がいった様子で小さく何度も頷く。
いくつかの嘆息が、室内を満たした。
「気乗りしないのは解る。言いにくいが――――作戦中は、パールゥを俺に近寄らせないようにして欲しい」
「いやいやいや。な、何だよ? よく知らねえけどお前達、そんなこじれてんのかよ今?」
ビージが言う。トルトが次いだ。
「面倒にも程があんだろ。なんで他人の色恋沙汰に首突っ込まなきゃいけねぇのよ……この後話すか、この場に呼んで了解を取るワケにゃいかねえのか?」
「……正直、話すことでどんな影響が出るか、予測出来ないんだ。今のアイツは。あのイベントがいい例だ」
「同感ですね。私も、流石にあの子にああまでしこたま殴られることになるとは、ついさっきまで考えもしませんでしたから」
下を向いたままそう言い、右手で頬に触れるナタリー。治癒魔法で既に傷は癒えているものの、イベント中の顔は随分な有様だった。
ナタリーが言ったことで、皆の腑にも落ちたのだろうか。
トルトに続いて声を挙げる者は居なかった。
くそ、何なんだこの――どこか続きを話しにくい空気は。
まったくやりにくい。
「全てが終わった後に俺が詫びを入れる。だからそれまで、作戦のことをあいつに気取られないようにしてくれ。どう影響してくるか解らない。あいつが王女に何かしらアクションを起こそうものなら、計画そのものに差し障りが出かねない」
「めちゃくちゃヤベー奴扱いじゃねーかよまるで……」
「文字通りの腫れ物だね……かわいそうだけど、作戦中は仕方ないな」
げんなりした様子でロハザー、テインツが言う。シャノリアは辛そうに目を閉じた。
だが一応、全員が納得してくれたようだ。
俺は小さく頭を垂れた。
「頼む。…………後は、襲撃者への対処だが」




