「どこまでもガクガク」
◆ ◆
「二回も言うことなくない? 二回も」
「いつまで泣いてんだマリスタおめーは。あいつのああいう性格は承知の上だろが」
「『今回に限り』とか言わなくていいだろがケイのバカッッッ!!! あほあほ!!!!」
「なまじ信用する、なんて面と向かって言われた後ですからショックが大きいようですね。まったくタチの悪い、こんな事態でなければ私が奴との全面戦争を起こすところです」
「規模がでけーよ。ったく、それもこれもなぁアマセ!」
「何だ」
「なんだじゃねえ! オメーがこんな大人数を自分ちに押し込めてんのが悪りーんだろが!」
場所は俺の家。
トルト、ロハザー、マリスタ、シャノリア、ビージ、テインツ、ヴィエルナ、チェニク、そしてナタリー……名を呼び上げるだけでも暑苦しい濃過ぎる面子を、俺は寮部屋に呼び付けていた。
「怒鳴るな。今全員に茶を配り終わったところだ」
「バカか!? 悠長に茶ァしばいてる場合じゃ――」
「ロハザー。これ美味しい」
「あ? 茶にうるさいお前が何言ってんだよヴィエルナ、こんなもん売店の安茶――」
「ギリートがそんな茶を置くのを許すと思うか?」
「……ああそうかよ、そういやあいつが居るんだったな」
「あれと一つ屋根の下……想像したくねぇな」
「まったくだね」
茶を啜りながらビージとチェニク。
お前ら貴族至上主義はどこ行った。相手大貴族だぞ。
「ケイ。早く話して」
居住まいを崩さないまま、シャノリアが俺を見る。
何やら不調だったようだが、もうその気配は感じられない。
とはいえ――狭苦しいから急かしている、という訳でもないのだろう。
「――分かった。じゃあ……まずは、ありがとう」
『っ……?!』
素直に、頭を下げる。
どすん、とビージが膝を立てた。
「オイやめろ。ヘンに捉えんな、俺らはテメーに借りがあるだけだっ。テメーがかしこまることじゃねぇんだよ!」
「いやそんな風には見えないぞ、ビージあれは。感謝してるなら素直に言えよ」
「テインツッ!! おめ――」
「僕はお前に感謝してる。オーダーガードの者として、恩を感じている。正直な気持ちだ」
正座の姿勢のまま体をずらし、壁に背を付いて立つ俺に寄ってくるテインツ。
「それに……悔いてもいる。自分のことばかりで、外に、周囲の者に目を向けなかった僕自身を。だから、もしお前が――」
「解った。解ったよ。みなまで言わなくていいから」
テインツの前に座る。
しばらく言葉に迷ったのち、――これだけ告げることにした。
「憎んだり憎まれたり、色々あったが。……俺は今直面してる問題に、この面子を中核にして立ち向かって行きたいと思ってる」
「ケイ!」
「勿論、みんなを信用してるから、なんてのは表面的な理由だ」
「…………え?」
マリスタの肩をローブがずり落ちる。
茶を飲んだナタリーが喉から息を漏らした。
「んなこったろうと思った。お前はそういう曖昧なモンには縛られねぇクチだ」
「そんなことない、と思うけど……」
「茶ァ々《ちゃ》入れんじゃねえヴィエルナ」
『お茶だけに?』
「言うなってそういうの!! 空気読めアホヴィエルナッ!! そしてそこのアホお嬢様ッ!!」
「ご、ごめ。言わずにはいられなくって」
「うっせ黙れッ。ったく……で? ホントのとこは何なんだよアマセ。なんか打算があんだろ?」
「ああ。……ビージ、チェニク、テインツ、ロハザー。もう一度、俺とケンカをして欲しい」




