「伝心は巡り、今彼の下に」
フェイリーが大きな溜息を吐き、背を向ける。
「アマセのことはお前に任せる、イグニトリオ。くれぐれも私情で動かないでくれよ」
「了解であります。決して肩入れなどせず、あくまで中立の立場から」
「……俺は彼らの目覚めを待ちながら、引き続き校長への尋問を続ける」
わざとらしく敬礼などをし、ギリートはフェイリーの背を見送った。
「さてと。アレ、みんな顔怖いけど」
「そういう話題だっただろ」
「あれー。君の運命を左右する存在になった僕にそんな口利いていいのかな天瀬君」
「私情を挟まないと言った直後だろうが。せめて一日は自分の言葉に整合性を持たせろ」
「ていうかさぁ。アレなんだったの、さっきの。ちょっと笑っちゃったんだけど。え何? 友情に目覚めました天瀬さん???」
見たことも無い程のニヤけ顔でギリート。
視界の隅でナタリーが記録石を構えた。死ね。
「お前、それを蒸し返――」
「『お前達』って、はじめていわれましたんですが」
「――…………」
ギギギ、と音が鳴りそうな首を、声の主に向ける。
ものっすごく、何かを期待するようなキラキラした目で、マリスタは俺を見ていた。
その表情で、少しおかしくなり始めている言葉遣いで、もう何を考えているのか大体察しがついてしまう。
「黙れ。あと一時間は黙ってろ」
「私をっ、ひぐっ、ちゃんと信じてくれてるってことですかうわぁぁァァーーーーんびぎゃーー!!!」
「よしよし。嬉しかったね、マリスタ」
「……俺もクソサムいセリフ言っといてナンだがよ。たったあれだけでここまで背筋に悪寒が走ったのは初めてだったぜ。チェニクにも見せたかった」
「余計なお世話だ」
「映像撮ってるのでいつでも売りますよー」
「ナタリー貴様」
「ていうか、ホントどうしたってのさ君は。バレてすぐは君、何も弁明なんてしなかったのに……さっき急に」
「忘れろテインツ。この場を乗り切るための方便だ全部」
「顔赤いよ天瀬く~ん???」
「死ね。赤くねぇ」
「……お前もああいうその、『アレ』にほだされたのか、え? ヴィエルナよ」
「ケイのあれ、男女関係なくオトすから。ロハザーも気、付けて」
「何にだ何に。何に」
「コントはその辺にしとけ、バカガキ共」
――静かで太い一喝が、場に冷静さを取り戻させる。
トルトは寝ぼけ眼のような半眼で俺を見た。
「で? 実際お前さんはどう動くつもりなんだよ」
「…………俺は」
トルトから視線を外し――俺を庇ってくれた面々を見る。
「今回に限り、あんたらを信用することにした。今回に限り」




