「動かぬ体、動き続ける脳、こころ」
テインツが、フェイリーの前に跪く。
マリスタ達が目を見開いた。
「こいつが信用に足る人物だと、絶対に証明します。この事件の解決を以てっ」
「話にならない。それで通るなら世に犯罪は存在しない」
「お願いしますっ! 私の――オーダーガード家の威信に賭けて、必ず証明してみせますっ!! お願いしますっ!! レットラッシュさんッ!」
「何を言――――っ!?」
何かを発しようとしたフェイリーが口を閉じ、目線を移す。
跪くテインツの横。
ビージ、ロハザー、ヴィエルナ――――そしてマリスタが、彼に倣うようにして跪いたのだ。
流石にトルトは顔を引き攣らせているだけだ。
ナタリーなど、今にも吐きそうな顔をしている。
――そうだよな、普通。
「…………マリスタ・アルテアス」
「っ。……はい、」
「今、俺の前にそうして頭を垂れていること。それは、お前もケイ・アマセの為に……家柄さえ投げ打つ覚悟ということなのか? アマセが黒だった場合、その行為が家に――――国にどんな事態を引き起こすか、解ってるのか?」
「…………国」
「犯罪者の片棒を担いだ家がどうなるかは、よく分かっているはずだ。つい数か月前まで、ここで権勢を誇っていたティアルバー家は、今やプレジアでは語ることさえタブー視される罪人だ。国内全ての邸宅には調査の手が入り、財産も悉く没収。血縁の者は残らず捕らえられ、娑婆にティアルバーの血を引く者は誰一人としていなくなった。たった二ヶ月の間に、だ」
「…………」
「その上ティアルバーは、プレジア建国に携わり、今なおこの国を支える柱の一つでもあった大貴族の一。彼らがいなくなることは、そのまま国の疲弊にさえ繋がるんだ。リシディアが過去幾度も他国の侵略によって国土を削られてきたことは十分に学んでいるだろう。――そしてそれはお前も同じだ、アルテアス」
「…………!」
「訊かせろ。お前は――お前達は、そうしたリスクを飲んででも、ケイ・アマセを信ずるに足る人物だと言い切れるのか?」
――声を挙げろ。
自らフェイリーに付いていけ。
たったそれだけで終わる、無意味な茶番劇。
そのカードを握っているのは俺だ。
誰にどう遮られることも無い。
なのに、お前は何故――――黙りこくったまま、知り合い達に頭を下げさせているのだ、ケイ・アマセ。
お前は既に、彼らの気持ちを無下にする行いをしている。
たったひと声をどうして挙げない。
この茶番を続けさせているのが俺であることが、ナタリー伝いででもこの場の者達に露見すれば、俺は彼らからの信用を無駄に傷付けることになる。
だが動かない。
否、動けない。
天瀬圭は、こんなにも状況を解っているのに――――頑として、ケイ・アマセの身体を動かすことが出来ない。
何なんだ。
まさか、これも呪いの一種だとでも――――




