表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

611/1260

「その功を、自らに宿し」



 フェイリーが声を低くし、テインツに視線を送る。

 彼はそれを、真正面から見つめ返した。

 遅れて現れたシータが、不安そうにテインツへ、俺達へと目をさ迷わせた。



「そいつは嫌な奴です。いつも涼しそうな顔をして腹の中を見せなくて、自分の感情や都合で人を利用して、その好意につけ込んで。お世辞にもいいやつだとは言えません」

「ギリート。空気を読め」

「くっ……ぷ。はい。ごめん」



 たしなめても壁を向いて笑いをらし続けるギリートを全員がひとにらみし、視線を戻す。



「それで? その嫌な奴の肩をお前は何故持つ」

「でもアマセは、俺を救ってくれた」

「っ――」



 ――ギリートではないが吹きだしそうになった。

 勿論もちろん笑いの意味ではなく、だ。



〝だから――これきりだ。これ一度だけ――――もう一度だけ、背負ってみよう〟



 そんな世迷言よまいごとを吐いた、あの日のケイ・アマセを思い出す。

 だがあれ(・・)だって、ケイ・アマセが自分の都合で背負おうとしただけだ。

 究極的には、テインツが俺に恩を感じる必要など微塵みじんも無い。



 ……無い、はずで……



「それはお前の都合だ。信用に足る客観きゃっかんではないな」

「奴はプレジアを変えた。貴族と『平民』の争いを終わらせるキッカケを生んだんです。最後には自ら、僕ら(・・)の想いを引き受けて」

「クサい友情話はもうやめろ」

「これは友情などではありません。事実です」

「何が事実だと? 貴族と『平民』の争いは終わったか? なあ、バディルオン」

「――――」

「お前は、友人がやられたのを見て真っ先に『平民』を疑っていたな。どうだ、争いは無くなったのか? 貴族と『平民』の小競こぜり合いはもう起こらないと、それがアマセの成果だと言えるのか?」

「レットラッシュさん、僕は――」

「無くなっては、いません」



 ビージが静かに答え、



「テインツは『キッカケを生んだ』と言ったんです」



 テインツに向き直ろうとしたフェイリーを、更に答えて制止した。



「だから何だ? キッカケを生んだ、その証拠しょうこがどこにある? 今が口先で乗り切れる場面じゃないことさえわからないのか、バディル――」

「俺達です。……証拠しょうこはっ」



 力のこもり始めたビージの言葉に、フェイリーが眉をひそめる。

 無論、俺も。



「――――俺――――俺は。奴を殺そうとさえ思っていました。本当に。今だって本当はっ……クソほどいけ好かねえ奴だと思ってますッ。……ッでも、」



 ビージが拳を握り締め、ぶるりと震わせる。



「……死ぬべきは俺だった。力におごり名に自惚うぬぼれ、感情におぼれた俺だったんですッ……!」

「もういい。沢山だ。付いてこいアマセ。お前を拘束こうそくする」

「そんなことが言えるまでにッ!!!!」



 シータが、マリスタが「きゃっ」と小さく悲鳴をあげ、耳をふさぐ。



 ビージは砕けそうな程()み締めた奥歯からゆっくりと力を抜き、開いた口から空気の塊を吐き出して、体のりきみをいていく。



「……俺はコイツのおかげで変わったっ。俺だけじゃないっ、テインツも!……他の奴らも、みんなだ!」

「黙れ。何度言っても同じだ、キッカケを得てプレジアが変った証拠など何も――」

「だったら証明しますッ!!」



 テインツが、フェイリーの前にひざまずく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ