「異世界より、孤独の君へ」
フェイリーが小さく目を見開く。
しかし、漏れた驚きの声は俺のものだった。
「ま……マリスタ? 何を言うのです、今コレに与しても貴女に何のメリットも――――」
「無いよ。無いし、すごく疑わしいけど……私はケイを信じようと思う」
「――――」
「――――」
……ナタリーと共に固まる。
ギリートが、そしてリセルがこちらを見ていることに気付き、努めて表情を平静に保つ。
いきなり……いきなり何を、突拍子も無いことを。
「……発言の意味は解ってるのか?」
「……解ってます。あっ、でも、それだと……私もアルクスに、捕まっちゃいます?」
「捕まるに決まってるでしょう? 一時の気の迷いですよね、考え直してくださいマリス――」
「じゃあ俺も捕まえてもらわなきゃな」
――およそこのタイミングで聞こえる筈の無い声が、皆を振り向かせる。
俺とフェイリーの間に、ぶ厚い筋肉の壁が立ちはだかった。
「!?」
「び――」
「――ビージ・バディルオン……!?」
……マリスタと、名前を呼んだきりナタリーまでも絶句した。
ヴィエルナに視線を飛ばしてみるが、彼女も驚いている様子。
こいつの差し金でも無いのか。
馬鹿な。
だとしたら、
〝殺してやる殺してやるぞアマセェッッ!!!〟
……だとしたら、何だってこいつが俺を庇う――
「出んなら声かけろよ、ビージ。……俺もノッた」
「は!?」
「……ロハザー・ハイエイト。お前もか」
「くそっ。メンドくせぇ所で信用を担保にしやがって」
「……!? ざ。ザードチップ先生」
流石に戸惑いを隠しきれない声でフェイリー。
トルトは本当に面倒臭そうに俺をひと睨みしたが、それでも俺への支持を取り下げなかった。
馬鹿かこいつら。こんな信用合戦をせずとも、俺とフェイリーが二人きりになれれば話は前へ――
〝なんかあったら頼れや。話くらいはきいてやる〟
「――――」
――――合点。
「私も」
「……!」
「ハッハ!」
「来てくれると思ったよっ、ヴィエルナちゃん!」
――――合点して、いいのか。
こいつらが、俺が今思いついた思考回路で動いてくれているのだと……そんな、自分勝手な合点をしてしまって、本当にいいのか。
良い訳が無い。
俺は自分の為だけに生きてきた。
人を省みることも、省みられることもない。そんな義理は、どこにも生じていない筈だ。
百歩譲って、意味不明な性分を持つマリスタとヴィエルナ、そして利害の一致の上にいるトルトはまだ理解できなくもない。
だが奴ら――ロハザーやチェニク、ビージは俺に味方する義理は何も無い筈で――
「あの時。アマセは、僕たちの為に戦ってくれた」
声へ振り返る。
そこにいたのは、医務室の奥から戻ってきたらしい茶髪の少年。
「……テインツ・オーダーガード」




