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「不測の事態」



 そしてもし、襲撃者とアヤメが同類であったとしたら。

 襲撃者もまた、傷付いた者を再び治療してくれるだろうか。今回のように。



 そして、もしココウェルが襲撃の首謀者しゅぼうしゃだったら?

 あいつの刹那的な激情で、もし自棄やけっぱちな無差別の襲撃事件が起きたら?



 よしんば襲撃を鎮圧ちんあつさせたとしても、その後はどうなる?

 出涸でがらし王女とその配下達を手元に置いて、「プレジア」は一体、「リシディア」を相手にどのような交渉(・・)を繰り広げることになるのか。



 確認しなければならないことは山とある。

 慎重に動かねばならない場面も山とある。



 仮定が多すぎるままに議論を尽くし、下手に事態を進展させるわけにはいかないのだ。



「……それに、俺が話していない情報は、本来は別件べっけんなんだ。まだ、この襲撃事件に明確な関わりを持っていない」

「関わりがつかめてから話すと? 全てが終わった後でか」

「皮肉を言わないでくれ、フェイリー。……後手に回るつもりは無い。白か黒か、近いうちにハッキリさせるつもりだ。この件が襲撃に関わっているのか、いないのか」

「これまではっきりさせられなかったものを? だったらこうなる前にハッキリさせておいてくれよ」

「…………」

「味方をしてやれなくて悪いな。だが俺はアルクスで、お前とは初対面に近い。情報を隠す者を信用できないと思うのは普通のことだと思わないか?」

「その通りだ。そしてそれも十分解わかった上で、」



〝誰に何を話すべきなのか、誰を信用すべきなのか〟



「……皆に頼みがある。この事件、俺に預けてくれないか(・・・・・・・・・・)?」



 ――――沈黙。



 それはきっと、あざけりさえこもった一瞬。



「…………限りなく怪しいこの状況で、お前を信じろと。そう言うんだな、アマセ」

「ああ。時間をくれ。俺を信じて、待っていて欲しい。俺が握っている情報が、本当にこの事件の真相足り得るのかどうかをハッキリさせるのを」

「――言いたいことはわかった。ケイ・アマセ。校長と同じくお前を拘束こうそくする」

『!!』

「ちょ――ちょっと待ってくださいッ!」

「そしてお前に問おう、マリスタ・アルテアス」

「っ、ぁ、」



 言葉でマリスタを征すフェイリー。

 マリスタはまるで指先を眼前に突き付けられたかのようにり、押し黙った。



「この男は今を以て我々(・・)の仲間ではなくなった。アマセの知っていることをお前も知っているな。全て話してほしい。今この場でだ」

「…………!!」



 全員が、何も言わずにマリスタを見る。



 ――――上手くいった(・・・・・・)



 フェイリーの決定はごく自然だ。

 俺でもきっと、彼の立場ならそう決定し、明らかな不穏分子ふおんぶんしである俺を排除するだろう。



 だからこれは、予想通りの結末。

 


 この後フェイリーと、あるいは他のアルクスと二人だけになったタイミングでなら、この情報を洗いざらい話すことは十分出来る。

 俺が危惧きぐしているのは、玉石混交ぎょくせきこんこうとした今この場にいる全員に、この情報が知れてしまうことだからだ。



 情報が多数に知れてしまえば、敵にれる可能性も高くなる。

 ごく一部の信頼できる仲間だけに話し、ジワジワと信頼を集め、策を練る。

 これが今思い付く最善の策だろう。

 後は全員を口車に乗せて――――俺を助けようとして、きっと今ここで口を割ってしまうであろうマリスタが持っている情報が、俺として取るに足らないものであると誤認ごにんさせ、適当にこの場を乗り切ることが出来れば良いだけ――――



「……話しません。私も」

「――っ!?」

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