「致命的失言」
「この三人に治癒魔法の心得は? ビージ。特に裂傷――切り傷に対しての」
「……そう上手かったわけでもねぇと思うがな……もちろんヘタでもねーがよ。だけど、治癒魔法で目立ってる奴は、こん中にはいねぇ」
「だとすると明らかだな。襲撃者だ」
「は!? なにそれ、襲撃者が襲撃した人を回復させたって――――」
言いかけたマリスタが、
〝本当にマリスタの傷は治ったのか。今の緑に光る魔石は何だ〟
〝実際に見て確かめてみるといい。傷は塞がっている筈だ〟
恐らく俺と同じことに思い至り、口を開けたまま声を断った。
「でも、そう考えると辻褄合うよね。やっぱり襲撃者は『痛みの呪い』の記憶を奪いたいだけで、僕らを殺すつもりはないってことだ。キースさんが斬られた傷も、素直に記憶を消されてれば治してもらえてたのかもね」
「縁起でもねーこと言うなってアンタは……」
「あれ。もっと怒ると思ったんだけどな」
「この……」
「……トルト」
「あ? ンだ」
手袋を外し、小指で耳を穿っていたトルトに声をかける。
こいつなら知っているかもしれない。
「傷の治療をすることが出来る魔石とは、高価な物なのか」
トルトが「あー」とでも言いたげに口をポカンと開け、得心がいった様子で明後日の方向に視線を飛ばす。
「なるほど? そいつを敵が使った可能性か。だが、その辺のモンじゃそうそう良い効果は期待できねーぞ。その辺で販売されてるものを買ったところで、治せるのは擦り傷が精々だ」
「じゃあ特別に良い品だったら、深い裂傷を治すことも可能なんだな?」
「ああ。例えば――剣で深く斬られた箇所とかな」
『!』
場の空気が変わる。
フェイリーが俺とトルトに一歩近づいた。
「奴らは簡易転移魔石を持っているような連中だ。純度の高い――効果の高い治癒魔石を持っていても不思議じゃない」
「それでトルト、フェイリー、あとマリスタに、シャノリア――シャノリアあんた、大丈夫か? えらく顔色が悪いが」
「え――ええ。ちょっと体がフラつくだけよ、心配しないで。それで、何?」
「……? ああ、治癒魔石の値打ちだが。どのくらいの値段のものなのか、知らないか」
「わ――悪いけど治癒魔石なんて見たこと無いなぁ。分かんない」
「俺も知らねえな、価格までは」
「だが、すぐに調べは付く。時間は無いが今から――」
「時価三百万レペス。それも一瞬で使い切っちゃう程度の石でもね」
戻ってきたパーチェが、指先で何かを弄びながら言う。
それは緑色の小さな――
「――――治癒魔石じゃないですか! 持ってたんですかパーチェ先生っ」
「ま、一応医師の端くれだからね」
マリスタが弾けるように駆け寄り、パーチェの手の上で光る石を興味深げに見つめる。
三百万……その辺の奴の年収くらいはあるな。やはり襲撃者は王国、もしくはプレジアの――――
――――待て。マズい。
「なんでそれが治癒魔石だって分かったんだ? アルテアス」




