「残されたもの」
医務室には、既に結構な人数が集まっていた。
この騒ぎで意識を回復させたらしい、目を擦っている風紀委員数名をよそに、面々は医務室の一角にある三つのベッドに集まっていた。
ベッドに寝かされていたのは、二人の義勇兵と――腕の腕章で分かる、一人の風紀委員。
その風紀委員の腕を取って――パーチェ・リコリスは、なにやら手の平サイズの小さな水泡を指先に発生させていた。
共に来たアルクス、フェイリー・レットラッシュが手近に居たヴィエルナに声をかける。
「発見者は?」
「俺です」
軽く手を上げただけで天井に届きそうになっている巨躯の男――ビージ・バディルオンが、顔の筋肉を引き攣らせながら応える。
同じ班と思しき二人の義勇兵も彼に倣った。
「発見時の様子と経緯を聞かせてくれ」
「場所は第五層、初等部の教室区画。たまたま近くを巡回していたことで、こいつらの放った彩光石の音に気付きました」
「音……そうか、しまったな。教室区画のような狭い場所が多い層では光は届きにくい」
「おまけに五層は、急病者に備えて昨日、急遽設けられたベッドルームがあったよね。医務室が今回の件で塞がっちゃったから」
「……手の上で踊らされている気分だな」
淡々と言う、相変わらず壁にもたれたギリートに、吐き捨てるようにフェイリー。
彼は視線をビージに戻した。
「続けてくれ」
「倒れてた三人は、いずれも意識を失っていました。外傷はなかったんですが……」
「俺が、床にわずかな血痕が残っていることに気付いたんです」
「血痕か」
「そう。それで血液を調べてみようってことになった訳」
ビージの言葉を継いだのは、先程の水泡を気絶した風紀委員の腕に押し当てているパーチェ。
人差し指で押しあてられた水泡が内部で渦を巻いたかと思うと――その一筋の渦はすぐに消え、程無くして――赤黒い液体が、水泡の中に滲み始めた。
どうやら採血を行う魔法のようだな。
「床に遺された血が誰のものか、すぐに判ると思うから。ちょっとだけ待っててちょうだいね」
「よろしくお願いします」
フェイリーの言葉を背に、パーチェが医務室の奥へと消えていく。
ビージが息を呑み、鼻から空気の塊を吐いた。




