「拙き白兵」
ケイミーに先んじた魔弾の砲手を危なげなく回避し、再びケイミーと白兵。
右手で親指を握られた。
「っ、っ」
「ハァッ!」
親指を握ったケイミーがそのまま腕を軽く前後に振り――――親指の関節が鋭い痛みと共に内側で鳴る。
驚いて意識を取られた隙に主導権を奪われ、打ち出された両手で腹部を打たれて吹き飛んだ。
「っ……ごほっ、」
詰まった呼吸を無理やり再開させ、大きく息を吸って腹の痛みを紛らせる。
辛うじて胸の宝石に至る拳筋は腕で塞いでいて狙われなかったが――これを破壊されては何を試すことも出来なくなる。祭りの期間中、唯一の合法的に戦闘を行うことが出来る場なのだ。
ケイミーの手には、既にマークは無い。
つまり、その分思い切った戦いも出来るということ
「はぁっ……やれる。アトロ! 私だいぶやれるみたい!!」
「ああ、見てるぞ! お前ならやれる――この二ヶ月の修行の成果を見せてやれ!」
「――応ッ!!」
――それは実力か、はたまた揺らぎか。
だが分かる。
少なくとも今、こいつは。
「――強いな」
三度接近。
こちらの攻撃を攻めの起点に転換し虚を突き、連撃へ繋いでくる。
ならば奴の手に余るほどの大技を繰り出してやればペースを乱せるのだろうが――如何せん、この戦いはルールのあるイベントだ。
大技は望めない。
つまり――
「らあっ!」
「!!」
下から両腕の付け根をとられ、思い切り上に広げられる。
後ろに倒れていく俺とケイミー。
眼前で大きく振りかぶられたケイミーの頭。
無防備に晒された胸の宝石。
「もらっ――――う゛っ!」
足を上げてニーキックを放ち、つっかえ棒の要領でケイミーの頭突きを防ぐ。
「ここだっ!!」
「!」
直後頭上、俺とケイミーの僅かな隙間に魔弾の砲手を放つアトロ。ケイミーの背後からの放射状の跳躍の中、こんな狭い間を狙い打てるのか。大した精度だ、だが――
足で発条を作ることは出来ないが――辛うじて地に着いていた両足で飛び、魔弾の砲手の射線をケイミーの背で塞ぐ。
「あっっ、」
「う――きゃああっ!?」
爆音。
ケイミーの背で爆発した魔弾の砲手に彼女が怯んだ刹那、膝を叩き込んだ右足を伸ばし、足の甲で押し返すようにしてケイミーの組み付きを脱する。
脱した先には、当然――
「くっ!?」
「――――」
――着地したばかりの、接近戦は苦手なアトロ・バンテラス。
ローブを掴み、無理矢理接近戦に持ち込む。
多少心得はあるようだが、どうとでもなる。
我武者羅に繰り出される攻撃をいなし、宝石へと真っ直ぐに――
「づァっ!!」
「!!?」
隙を突いて伸ばした手が払われた。
背後右下から床を滑るような音。
「ッやぁぁぁああああッッ!!!」
「なに――ッ!」




