「血の熱、死の息吹」
魔力が弾け、輝く。
空気を劈く高い音、次いで襲う鋭く冷たい痛み。
テインツの驚愕さえ飲み込んだ魔力の暴発は予想通り弾け飛び、俺達を巻き込んで空間を凍結する。
記憶した限りでは、凍結の範囲は魔力の発生源から三十センチ四方ほど。つまりあの時と同じように、こうして魔力の発生源を手元から目一杯離しておけば、この手以外が被害を受けることはない。
逆に、近ければ――
「!!? お、おいテインツ!? テインツ!!」
ビージと呼ばれていた大柄な男が叫ぶ。直立不動のままよろけ、真後ろに倒れるテインツは――――胸から上を、顔まで巻き込まれるようにして、氷で覆われてしまっていた。
「ッ……!」
突如、俺の体からも力が抜け落ちる。
脱力感。しかし熱く滾ってくる体。床に屈み、この滾りが精神的なものでないことに気付いた時には――俺は、その熱を口から外に吐き出してしまっていた。
ベシャリ、と目の前に赤い花が咲く。
それが吐血という現象だと、自分が血を吐いたのだと、じわりじわりと理解が広がった。
――ガシャン、と。
聞き慣れない音が、俯き膝を付く俺の正面で鳴り響く。
眼前に、氷の破片が飛んできた。
その意味を理解した時には、
「限界を超えて魔力を使えば、当然そうなる。そんなことも知らないのか、能無し」
声と共に、俺は頭を正面から鷲掴まれた。
グン、と後ろに引っ張られる体。引っ張られるままに動く頭。そして――――後頭部に、感じたことがないほどの衝撃と熱を受けた。
「この――――――最底辺の無能屑『平民』がァァァッッ!!!!」
「!、?、?、、ァ……――!!!!」
視界が揺れる。
視界が揺れる。
眉間から、眼球から、衝撃が、突き抜ける。
「舐めるな舐めるなナメるな!!!!! 貴族ですらない低俗な人種がっ!!!」
後頭部。
後頭 部が、
割れる。血が、
血が、しぶき頭が、われる。
「誰に!!!!!! 向かって!!!!!!! 誰に!!!!!!!!!!!」
あたまが、かち、われ、
「死ね――――死ね!!!!!!!!!!! 死n――――――、」
「大概にしろ。テインツ・オーダーガード」
……やつの手から、かい放される。
こうか不幸か左かたの激つうが、俺に意識を失うことを許さなかった。
肩へと、未だとうけつの痛みが残る右手をあてがい、うなだれる。首筋を、手とは打って変わって生温かい液体がおびただしい筋を描いてしたたってくるのがわかる。
割れている。
頭が割れている。
…………死ぬ?




