「不敬終身刑」
鼻を折られたような衝撃が伝い、衝撃で仰け反るマリスタ。
しかし、後退しない。
ただその場で頭だけを上向かせ、弾丸を受け切った。
(……軽い)
魔弾の砲手を受けたことは、何度かある。
だがココウェルのそれは、これまで受けたどの魔弾の砲手よりも数段弱く。
今のマリスタには、その理由がすっかり解ってしまう。
〝家を継ぐってのも全然想像できないし、ていうかしたくないし〟
〝所有属性じゃあるまいし、そうそう適性なんて分かんないよねー。なはは、私の適正ってなんなのかしら〟
(……そんなことだから、軽いのよ。あなたの言葉は。あなたの行動は)
〝いいじゃないか。現時点で馬鹿だってことは、まだまだ伸びしろだらけってことだろ〟
〝さも俺が変えた風に言うなっ。変わったのはお前自身だ。お前が変わったんだよ〟
「どうしたんだよクソザコ低能貧乳女ッ!! たった一発で怯んだのかお前ッ!! それで兵士コースですって? きゃははっ……笑わせんなバーカァ!!! 死ね!!!! ハハハハハッ――」
〝自分を守り、他人さえ守る――――それが傭兵でもなければ騎士でもない、義勇兵という集団なのだと私は考える〟
「義勇兵」
「――ハ?」
「私達は兵士じゃなくて、義勇兵だよ。間違えないで」
「知らねーよンなことはバーカ、ボンクラ! 貧乳! 言い返すならもっとマシな言葉で言い返してこい能無し!! 貧乳、ひんにゅーっっ!!」
〝その力で、義勇の意思で、救えるだけの者を精一杯救え〟
「吠えんじゃねーよ。バカ」
「――――……だからよ。お前誰に向かって口利いてんだって」
「うるさい、バカ。もういいから。あんたの薄汚れた口車はもうウンザリ」
「――――死ねーーーーーーーーーっっっっ!!!! 魔弾の砲手魔弾の砲手魔弾の砲手魔弾の砲手魔弾の砲手ォォォォ――――!!!」
数発の魔弾の砲手。
だがその軌道は全て点で、眼前に穴を生じている。
避ける必要さえ、ない。
(英雄の鎧――――)
地を蹴る。
「っ え、」
清流のような静かな速さで、マリスタはココウェルに肉薄する。
構えられる拳。
目を見開くココウェル。
「あ――あやめっ」
それが、断末魔だった。
「目ェ覚ましなさい――――この大バカ女ッ!!」
ゴン、と。
拳骨が、第二王女の頭に、命中した。
「~~~~~~~~~~~~~っっっ??!??!??」
頭を押さえ、ココウェルが後退りながら尻もちをつく。
吹き飛ぶことはない。頭が割れる程でもない。
ただただ、痛いゲンコツ。
それはまるで、
「っ……ぅう……ッ!」
「どう? 悔い改める気になった?」
「――――」
ただの、体罰で。
「…………誰にもっ、」
「?」
「今まで誰にもッ――――ぶたれたことねェのにお前ェェッ!!!」
激昂。
目を剥き、顔を震わせ、青筋を立て、ココウェルがマリスタに怒る。
マリスタは、薄く笑った。
「じゃあ、私があなたを人間と認めた第一号ね」
「――――ッ!?」
「すごいこと言おうか?」
〝あんたが道を踏み外しそうになった時は――――ブン殴ってでも止めてみせる!〟
「私ね。あんたと友達になりたい」




