「大バクチ ~口八丁手八丁~」
「一年じゃなかったね。あの日から三日足らず、君の命はここで…………何やってるの? それ」
声を無視し、胸の前で両手の指先をそれぞれ重ねる。
イメージは容易だ。先程まで数十分、ひたすらこの作業だけを繰り返してきたのだから。
「――――」
イメージしろ。
お前は今、両手に「魔石」を持っている。
魔素と魔力回路を意識し、魔力を練り、この手に魔力を顕現させる――!
「だから――何をやってんのさ君はッ!」
テインツが迫る。――ことを認識してから動くのでは、遅すぎる。
奴が動く。その勘だけを頼りに、全力で違う場所へと駆ける。
振り返ると、運よく――本当に運がよかっただけだ――奴は真っ直ぐ、数秒前まで俺がいた場所へと突っ込んでいた。同じく振り返ったテインツと目が合う。
その目に再び、怒りが灯ったように見えたところで――ようやく、手の中に意識していた魔力の流れが止まってしまったのが体感できた。
「集中してないと難しいか……」
覚えたての技術だ。やはりそう都合よくいかない。
「……まぐれだよ。調子に乗らないでもらいたいね!」
顔を怒らせながら再び接近するテインツ。もう僅かだけ時間を稼げれば――
「グッ!、、!、? あ――――ガ――――!!」
「英雄の鎧で強化した速度だ。常人がどんなに早く動いたところで無駄なんだよ!」
刹那思考の間に、俺は胸倉を掴みあげられ、両足が床を離れていた。
現状打開、方法は、――――
「さあ、終わりだアマセ君。君はその存在で我々を著しく貶めた、その罪には相応の罰を――!」
――――ひとつ。
「〝鎧の乙女、純潔の戦士よ。その勝鬨の残滓を我へ与え給え〟」
「!?―――― お前っ」
少々間違えたか。だが――
「バレット」
――――――――全身の痛み、そして渾身の力でもって顔面を枕で叩かれた時のような、強烈な眼圧を感じた。
耳が遠のく衝撃、吹き飛ぶ体。なんとか両足を地に落ち着け、すぐさま魔力を集めにかかる。
「ぶあっ……っ、アマセ、お前ェッ!!」
テインツの声。だが集中は切らさない。
俺に出来て、お前らに出来ないこと。それは――「無様な失敗」だ。
バレットの暴発による煙が晴れ、テインツを捉える。先のバレットの衝撃で落としたのか、剣を持っていない。
俺を見て、テインツはますます顔を怒らせた。
「貴様……何なんだよ一体そのポーズは。調子に乗りやがって!!」
「俺に出来る『最善』をやってるだけだ。それに、調子に乗ってたのはお前だろう。魔法を使えないからと油断し過ぎじゃないのか。そして教師が来てから随分悪口が減ったじゃないか。教師の前では、流石の貴族様も偉そうには出来ないか。とんだ食わせものだな」
「この………………!!!」
「この能無し」。
その言葉を飲み込み、テインツはそれだけ口にした。
「遊びは終わりだ……!」




