「元サヤの安心」
「糞が、次から次へとっ……!!」
「大体誰なんですかアレはっ! 無自覚なつもりなのかもしれませんけどそれにしたって節操無さ過ぎでは? 猿ですか貴方は」
「おっとダメだぜ嬢ちゃんっ!!」
「ひぎゃあぁあっっ?!?」
突如眼前に現れた筋肉の壁に、変質者にでも襲われたかのような悲鳴を上げて急停止、尻餅を着くココウェル。あれが王女だと知ったらあの二人、どうするだろうか。アヤメに殺されても知らんぞ。
じゃなくて。
「行くぞナタリー、今のうちに――」
「ケイ君ッ!!」
視界を覆う筋肉の壁から飛び出るようにして現れるパールゥ。
しまった、もうここまで来てやがったのか――!
「パールゥ、これはな、」
「ッ――――」
パールゥが息を飲み、口を硬く引き絞る。
ここに来るまでに他の、準備を終えているカップルを見てきたのだろう。同じような宝石、そして光るマークを施された俺とナタリー。
何を考えているかなど、火を見るよりも明らかだった。
「――――どうして!?」
「どうしてもこうしても無いんですけど。事の成り行き見ておいてそれしか言葉が出てこないのですか? 盲目もそこまで行くと笑いも出ませんね」
「焚き付けるなナタリーッ」
「焚き付けなんて。どうしてと言われたので答えたまでです」
「…………っ、」
「落ち着けお前ら。マジでそういうのやるなら祭りがやってないとこでやれ。迷惑してんだみんな」
「ハイエイト君に賛成だ。こういうデリケートな話は、誰にも聞かれない所でこっそりやるのをオススメするよ。なあマリスタ」
「わ、私にふらないでよ……でも、ここでは止そう? パールゥ。ナタリーも押さえて、ね? ケイは私が絞り上げるから」
「は?」
「いいえ!――ここで決着を付けよう」
言うなり、パールゥが――――ロハザーの腕を引く。
「あ? ちょ……おい、な、なんだよあんt」
「このイベント参加します! 彼と二人で!!」
「――――あんた何を言ってくれちゃってんのッ!??!」
「イェエイ!!! もう一組追加ァ!!」
「ごぶッ??!! な、なんだこれ取れねっ……?!?」
「き……気でも違えたのですか、あの子はっ……!!」
「お、おいナタリー、この流れはっ……!!」
「邪魔だっつってんだろこらハゲダルマッ!! ど・き・な・さ・い・よッッ!!」
「ノンノン!! もうあそこのカレとは組めねぇぜ嬢ちゃん! 既にカップル成立済みだ!!」
「成立済み??!?!??」
「あの禿げ達磨誤解を招く発言を……!!」
「ちょ、ちょっとケイっ」
「うっ」
マリスタに強引に首根を取られ、誰からも離されて二人になる。
「まず確認。あんた体調は?」
「……決まってるだろ。すこぶる悪い」
「体調不良なら見逃してくれるんじゃない? あのスタッフさん? 達も」
「俺の元気はきっと奴らに把握されてる。あれだけ人前で大騒ぎして、だからこそ選ばれた所もあるだろうしな。呪いのことを話す訳にもいかない」
「ダメか……じゃあ、始まってすぐ負けるしかないね」
「……そうだな」
「あーーそこちょっとぉっっ!! 顔近付けて何してんのよケイとマリスタッッ!!」
「マリスタっ何してるの!? あなたはもうケイ君とは組めないよっ!?」
胸をばるるんと揺らして近付いてくるココウェル、後方にはアヤメ。
丸眼鏡の奥で瞳を切なげに光らせ、憤然と歩み寄ってくるパールゥ。
もう、本当になんなのだ、こいつらは。
心からやめてほしい。今だけは。本当に。
「…………もーぉ。しょうがないなっ」
「ッ!?」




