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「弱さ、そして弱さ」



 側頭そくとうへの着弾ちゃくだん

 左の壁と魔法障壁にぶつかる感覚。

 連続する、最早どこが衝撃を受けているのかさえ分からない轟音ごうおん、痛み、激痛、揺れ、回転、鈍痛どんつう

 止まない。止まない。攻撃が、止まない。

 どのくらいの連射が基本なんだ。

 どのくらい連射すれば限界なんだ。        

 どのくらいすれば。



「――ぁ、」



 どのくらいすれば、この攻撃は終わるんだ。

 痛い。

 痛い。         ――そんなことは問題じゃない。

 痛い、         ――バレットはこれほどの連射が基本なのか。

 痛い、         ――無詠唱という技術まであるのか。

 痛い、         ――そして、戦いってのは厄介だな。

 痛い、

 痛い――――      ――体より先に、心が参り始めてる。



 ――俺の弱さ故、か。


 

 ……気が付くと、追撃は止んでいた。

 今にも飛びそうな意識を、グワングワンと揺れ続ける頭を必死で繋ぎ止め、視線だけを動かし、テインツを探す。

 かすれた視線の先には、あきれてものも言えないといった風情のテインツ。



「……そっか。うっかりしてたな。魔法が出来ないんじゃあ対物理障壁(たいぶつりしょうへき)だって展開させられないよね。打ち所が悪いと死んじゃうかもな……まぁ、全ては君が自分の力もわきまえずに義勇兵コースを志望したからだし、後ろ盾も力もない能無しの『平民』が一人死んだところで悲しむのは……君の家族が精々だろう」

「むしろ、せいせいするんじゃねぇか? こんな出涸でがらし、きっと家でも煙たがられてたに違いねぇんだからよ!」

「ハハ、えてるねビージ。そう言われると案外、こいつの家族は……あわれな息子の死に場所、ならぬ死なせ場所(・・・・・)としてこの場所を選んだのかもな」

「おい。何してんだテメーら、三十秒で交代だと…………何してんだ、マジで。オイ」



 この演習スペースの現状を見たのか、倒れる俺の上から降ってきたトルトの声がにわかに険しくなる。そういえば、模擬戦は三十秒ごとに相手を変えるんだったな――ということは、この演習スペース……随分ずいぶん目立ってしまってるんじゃないか?



「ザードチップ先生。どうして彼が魔法を一切使えないと教えてくれなかったんですか。いつも通りやったら、彼。あんなに無様に伸びてしまって」

「そうだぜ、ザードチップ先生よ。あの『平民』のザマは、この演習の監督官かんとくかんであるアンタの責任だぜ」



 ……あまり好ましくないな。目立つのは。

 ただでさえ、奴らに何故か目の敵にされているってのに。



「……? あいつ……」

「なんとか言ってくださいよ。僕、常々思ってたんですよね。ザードチップ先生の授業の放任ほうにんっぷりは目に余るなぁって。あなたのそれは生徒への信頼でも何でもなく、ただの職務怠慢しょくむたいまんなのでは? その結果がこれですよ」

「言っとくが、俺達には責任はねぇぜ? そもそも義勇兵コース自体、命の保証は致しません、てなコースなんだ。今回の件があんたの(・・・・)監督不行き届き(・・・・・・・)が原因の事故(・・・・・・)な以上、俺達に責任をなすり付けてもらっても困る」

「…………」

「むしろ演習の邪魔をされて、僕らは迷惑してるんですよ先生。僕らはいつも通り技を磨こうとしていたんだ。その貴重な時間を、こんな風に潰されて……あなたの責任は重いですよ、ザードチップ先生」

「つか代わってくれよ別の先生に。アンタみたいなテキトーな奴にエラソーな顔されて授業なんてされたかねんだよ俺達は。あんたら『平民』と違って、こっちは暇じゃないんだ。ディノバーツ先生が出てきてくれりゃ一番いいんだろうがな」



 ……まあいい。ここは大人しく気絶しておいた方が、これ以上の痛手を負わなくていいかもしれない。魔女やシャノリアが見せた回復魔法による治療が恐らく受けられるとはいえ、あまりひど怪我けがをすると、完治にどれだけかかるか分からない。

 幸い目を閉じればすぐにも意識が飛びそうなんだ。目を閉じれば――



〝――ぁあ。ああ。ぁああぁぁぁぁ…………〟

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